旅行計画に際する一連の作業過程をチャットGPTが変え始めている。ニューヨーク・タイムスによると、旅行代理店をはじめ、旅行計画助言者らは現在、顧客への提案に際しチャットGPTを活用し始めている。現時点では、生成人工知能の能力に限界があるものの、活用法を工夫すれば業務過程を大幅に効率化できる。
▽限界はあるものの情報をまとめて提示しやすいかたちに
チャットGPTのような生成人工知能は、たとえば「4日間のロサンゼルス旅行の予定を立てたい」「航空運賃とホテル宿泊料が安い時期を選んで、貯めてきたポイントも使いたい」「歴史博物館と遊園地に行って、ホテルの近くのヴィーガン食のレストランで夜7時に食事をしたい」といった要望に応える予定を簡単に組めるようにする可能性がある。とはいえ、現時点ではチャットGPTのできることに限界があるのが現実だ。
コネチカット州の旅行代理店で責任者を務めるオデド・バタット氏は、イタリアのトスカーナ地方に行く顧客に提案する際にチャットGPTに質問したところ、ワイナリー見学や美術館を含む14項目の提案リストが返ってきたが、「すべて知っていることばかりだった」と話している。ただ、チャットGPTは、すべての情報を顧客に電子メール送信しやすい形式にまとめてくれたという点で価値がある、と同氏は指摘した。
▽最新情報や常時変わる情報には対応しきれず
バタット氏が尋ねたような質問は、だれでも無料でチャットGPTに聞くことができる。それと同時に、現時点での限界も認識しておく必要がある。
チャットGPTを開発したオープンAIは、チャットGPTの最新版を3月半ばに市場投入したが、それでもなお最新情報を把握していない可能性がある。特に、航空便のスケジュールや天気予報のように刻々と変化する情報は反映されない。
さらに、インターネット上に流布している情報のうち、どれが正しくどれが誤っているかについては、正しく判断または識別することも難しい。
オープンAIは、チャットGPTが提示する情報について、かならずしも正確ではない可能性を利用者らに警告している。
▽「70~80%の確率で正解」では不十分
チャットGPTが改良されるにつれ、旅行計画の助言という仕事がなくなることを案じる声も多いが、8000人の旅行助言者らの連携網を構築したアウトサイドエイジェンツ(OutsideAgents)のチャド・バート共同社長は、「旅行代理店の終焉はむかしからつねに懸念されてきたが、新しい技術が出現するたびに使えるツールが増えている」と話す。
同氏自身もチャットGPTを使って、これまでに100種類以上の旅程を立てた。計画を立てる際の出発点として便利なうえ、「基本的な手作業を代わりにやってくれる」と同氏は話す。ただ、「エイジェントがなおも事実確認をして、手を加えなければならない」。
同氏によると、有能なエイジェントであれば、顧客が希望する内容にもとづいて、顧客が本当に満足することを嗅ぎ分ける感覚がある。「(ソフトウェアは)70~80%の確率で正解を出すが、それではCの成績だ。私たちが目指しているのはCではない」。
▽旅行関連データと専有データの統合で付加価値
オンライン旅行予約サービス大手のエクスペディア(Expedia)では、過去何年にもわたって人工知能を活用し、推薦情報を個人化してきた。同社のピーター・カーンCEOは、チャットGPTの出現について「大きな新しい一歩だ」と話している。
同社では現在、同技術を活用する方法を検討中だ。利用者らが画面上をクリックする代わりに、ウェブサイトに話しかけたり、チャットのように入力したりする機能を導入する可能性がある。また、航空券やホテル宿泊料、レンタカー料金といった最新データと利用者の購入履歴の2種類のデータを組み合わせて推薦情報を作成するのにチャットGPTを使う可能性もある、とカーン氏は話した。
ワシントン大学でコンピューター科学を教えるエイリン・カリスカン教授は、生成人工知能システムを構築するのに多大なデータや労力、費用がかかるため、チャットGPTのような既存のシステムに層を重ねて利用各社固有の業務目的に活用できるようにする方が高効率だ、と指摘した。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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