小倉直也
トランペッター・作編曲家

PEOPLE SPECIAL
様々な業界で活躍中の話題の人に、過去、現在、そして未来について聞く。

ジャズの本場ニューヨークを拠点に、トランペッター、作編曲家として活動する小倉直也さん。2026年6月「BMI 第37回ジャズ・コンポーザーズ・ワークショップ・サマーショーケース」でチャーリー・パーカー・ジャズ作曲賞を受賞した。幼稚園の頃から夢は「トランペッター」。日本でプロとして活動した後、さらなる成長を求めてニューヨークへ渡った。コロナ禍という予期せぬ困難も経験しながら音楽を続け、現在は演奏と作曲の双方で活動する。今回の受賞までの道のりと、ニューヨークで音楽家として生きること、そしてこれからの夢について聞いた。

Photo: Greg Wan

幼稚園から変わらなかった夢

小倉さんと音楽との出会いには、ピアノを教えていた母親の存在があった。幼少期から家族でコンサートへ出かけ、管楽器に触れる機会にも恵まれた。幼稚園の頃からトランペットをやりたいと、ずっと親に希望し七夕の短冊にも『トランペッターになる』と書いていたそうだ。その思いを知った祖母から誕生日にトランペットをプレゼントされた。小学校、中学校の卒業文集にも将来の夢は「トランペッター」。現在の活動につながる原点は、すでにこの頃にできあがっていた。

高校でジャズと出会い、プロへの道へ

これまで取り組んできたのはクラシックだったが、高校に進学しジャズバンド部に出会ったことが大きな転機となった。ジャズの魅力に引き込まれ、大学進学後もジャズに打ち込んだ。大学の枠を越えて演奏活動を続けるうちにプロのミュージシャンとのつながりも増え、演奏の仕事にも呼ばれるようになった。在学中には1年間休学し、演奏の仕事とアルバイトだけで生活することにも挑戦。それまでプロになることを心配していた家族も次第に小倉さんの決意を理解するようになり、卒業後は就職活動をせず、プロの音楽家としての道を選んだ。

ジャズをやるならニューヨーク

関西を中心に約4年間プロとして活動する中で小倉さんの周囲にはニューヨークで音楽を学んだ日本人ミュージシャンがいた。現地の話を聞くうち、自分もニューヨークで音楽を勉強したいという思いが強くなったという。もともと国際系の高校に通っていたため10代から海外に憧れていた小倉さん。「ジャズをやるならニューヨーク」という思いが確信へと変わり、2020年1月、大学院留学のためニューヨークへ移住した。しかし、その直後に新型コロナウイルスの感染が拡大。急きょ日本へ帰国するなど、渡米直後から予想もしなかった状況に直面した。それでもニューヨークに戻り、音楽活動を続けてきた。

頑張ってきてよかった

今回の受賞について、小倉さんはこれまで積み重ねてきた活動が一つの形になったと受け止めている。「賞を取ることがすべてではないです。でも、やっぱり頑張ってきてよかったなという気持ちにはなりました。」

アメリカで夢を追い続けることは決して平坦ではなかった。それだけに今回の評価は、自ら選んだ道を歩き続けてきたことへの一つの答えでもあった。「絶対に頑張っていたら、報われる時が来ると思うのです。そうやって頑張っている人同士で励まし合って、やっていきたいですね」

©Brian Berson for BMI

2つの人生を生きる

現在、小倉さんが目指しているのは、トランペッターと作曲家という二つの活動を両立させることだ。演奏家として高いレベルを維持するには毎日の練習が必要であり、また作曲家としては作品を生み出し続けなければならない。本人もこれを「2人の人生を生きるようなもの」と表現する。それでも演奏することが好きだからこそ、どちらか一方を選ぶのではなく、双方を自身の音楽の柱としている。

©Brian Berson for BMI

次の目標の一つは、セカンドアルバムの制作だ。昨年12月に初のアルバムをリリースし、日本で長く応援してきた人たちをはじめ、多くの人へ自分の音楽を届けることができた。「もっと聴きたい」という反応も、新たな作品を生み出す原動力になっているという。ニューヨークから発信される小倉さんの次の音楽にも注目したい。

「まだ聴いていない人には、ぜひCDを聴いてほしいです。いろいろなサブスクリプションでも聴けるので、チェックしてもらえたらうれしいですね」

プロフィール
兵庫県西宮市出身、ニューヨーク在住のジャズ・トランペッター、作編曲家、バンドリーダー。小倉直也ジャズ・オーケストラを率い、精緻なビッグバンド・サウンドと力強いトランペットで国際的な注目を集める。ニューヨーク市立大学クイーンズ・カレッジ、アーロン・コープランド音楽学校ジャズ作曲科を首席卒業。Marvin Hamlisch International Music Award(2021年)、Jimmy Heath Music Award(2022年)などの国際的音楽賞を受賞し、ジャズ・ギャラリー・コンポーザーショーケース(2023年)にも選出。「マリア・シュナイダーを思わせる叙情性とサド・ジョーンズ的なモダン・ブルースの感性」(MusicMagazine)、「バンドリーダー、作曲家、アレンジャーとしての卓越した才能」(Jaz.in)と国内外のメディアから高い評価を受けている。

公式サイト:www.naoyaogura.com

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