がん治療に大規模データを活用 〜米腫瘍学会の「キャンサーリンク」

 非営利団体の米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology=ASCO)は、数十万人のがん患者のデータを集めて、それを将来の治療に役立てる壮大なプロジェクト「キャンサーリンク(CancerLinQ)」を発表した。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、同プロジェクトによって、医師は巨大なデータベースをグーグル検索のように手軽に利用して、自身が受け持つがん患者に類似した症例を見つけ、治療方法の助言を得ることができるようになる。

 ASCOのアレン・リッチャー最高経営責任者(CEO)によると、米国では年間160万人ががんと診断され、そのうちの95%が紙の診断書に記録されてファイル・ケースに保管されるか、外部と接続しない電子システムに保存された状態だ。

 同氏は、それらの大規模データ(Big Data)がオンラインで統合されれば、がん治療にとって多大な情報資産になると強調する。それがキャンサーリンク発足の動機でもある。

 大容量の医療データを全米の医療機関から収集することは非常に難しい。ASCOによると、最大の課題の一つは、異なる電子システムからがんの診断および治療に関する情報を集めて統一システムに統合するソフトウェアとシステムの開発だ。

 ASCOではそれを可能にする試作システムをすでに構築し、30近いがん患者集団から10万件以上の乳がんデータを集めている。

 研究者らはその次の段階として、治療に役立つ有益情報をそれらのデータから発見および整理して報告書を作成する方法を開発中だ。ASCOによると、臨床現場で使えるようになるまでにあと12〜18ヵ月かかる見通しだ。

 医師はキャンサーリンクを活用するにあたり、患者の年齢や性別をはじめ、がんの種類、使われている薬の種類、治療方法といった全ての記録をキャンサーリンクのシステムに登録していく。そうして集められた情報はデータベース化され、医師らが自由に検索できるようにする。

 同データベースを使うことで、通例となっている治療方法を検証できる可能性も高まる。たとえば、「HER2」と呼ばれる乳がんの初期段階では、化学療法とハーセプチン(Herceptin)の投与が一般的な方法だが、実際には、現在の臨床データでその効果は証明されていない。キャンサーリンクはそういった課題に何らかの答を提示できるとも期待される。

 さらに、キャンサーリンクは、症例の少ないがんに対する治療方法の助言を与えることも可能になる。

 現段階では、医師と研究者だけが同データベースにアクセスできるが、ASCOは、患者が自ら情報を提供できるポータル・サイトをいずれ設置する予定。

 また、個人情報の取り扱いに関する懸念については、連邦および各州のプライバシー保護関連法に準拠するよう設計されている。

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