ウィーワーク、異例の巨大新興私企業に 〜有名上場3社の時価総額合計を超える

 新興企業向け労働空間賃貸サービス新興企業のウィーワークは、シリーズGラウンド(7回目)の投資集めで総額7億6000万ドルを調達した。ビジネス・インサイダー誌によると、同社の企業価値はその結果、200億ドルの大台に乗った。同社の躍進は、共有経済型の事業モデルが潮流の一つであることをあらためて裏付けるとともに、ソフトバンクの投資大成功に新たな実績を加えることになる。
 
 ▽異例のユニコーンが誕生
 
 ウィーワーク(WeWork)の企業評価額は今回の追加投資調達によって、ツイッター(129.6億ドル)とボックス(24.4億ドル)、そしてブルー・エプロン(15.4億ドル)という上場3社の時価総額合計を上回った。
 
 私企業(非上場会社)が、有名上場会社3社の時価総額合計を上回るというのは異例だ。
 
 新興企業とベンチャー・キャピタル投資の業界では、企業評価額が10億ドルを超える非上場新興企業をユニコーン(一角獣)と呼ぶ。
 
 存在感のある強大かつ有名なユニコーンとしては、ウーバーやエアビーアンドビーが挙げられる。
 
 ▽大企業の遠隔勤務場所としても機能
 
 2010年創業のウィーワークは、156の世界主要都市に計12万件の利用企業(入居する新興企業や起業家、フリーランサー)を抱え、運営する新興企業集積集合オフィス物件で会議室や通信設備、無料コーヒー、秘書サービス、プライバシー空間、人脈構築会といったサービスを提供する。
 
 マイクロソフトのような巨大企業も、4つの主要都市にあるウィーワーク施設の事務所で従業員の一部を遠隔勤務させている。
 
 ウィーワークには大企業向けサービスがあり、遠隔労働や契約社員の働き場所として大企業に提供している。
 
 ▽フィットネス・ジム市場にも進出
 
 ウィーワークはまた、フィットネス事業に5月に進出した。同社は、ウィーワーク・ウェルネスというフィットネス・ジムをニューヨーク市のオフィス施設内に開業する計画だ。
 
 同社のミゲル・マッケルヴィー最高創造責任者(CCO=chief creative officer)と共同創設者のアダム・ノイマン氏は、起業家向けのオフィス賃貸や住居、ジム、さらには理髪店も、地域社会の共有型経済とサービス網の連携および生態系を形成する方程式の項になる、と説明している。
 
 ▽共有経済型事業モデルが共通概念
 
 ウーバーやエアビーアンドビーといったユニコーンの台頭に加えてウィーワークの躍進の背景には、各種のデジタル技術やモバイル技術によって資源を共有することで手ごろ価格のサービスを提供するという共通した事業モデルがある。
 
 車を買わずに手配サービスを利用できるようにするウーバーや、ホテルを予約せずに空き部屋に泊まれるようにするエアビーアンドビー、そして、事務所物件を借りずにオフィス空間を間借りできるようにするウィーワークの事業のすべては、技術を応用していかに快適かつ安価に資源を利用できるかを可能にする点で共通概念にもとづく構造だ。
 
 ▽地域社会性を取り込んだ進化形
 
 ノイマン氏の場合、そこに地域社会性をもたらすサービス群を共有型として集合させるという構想が加わる点でその進化形を目指しているといえる。
 
 その結果、たとえば、加入せずに使えるジムや、共有型施設に共同で入居する理髪店、弁護士や会計士の共有労働空間がウィーワークの運営施設に出現するかもしれない。
 
 現在なら購入や加入、長期契約でしか使えないサービスの多くが、数年後には共有型に移行している可能性もある。
 
 ▽年商10億ドル、IPOについては沈黙
 
 ウィーワークの筆頭株主はソフトバンク。ソフトバンクは2017年3月に3億ドルを同社に投資した。ウィーワークの評価額はそれによって、160億ドルから180億ドルに拡大した。それが今回の追加投資調達によって200億ドルの大台に乗った。
 
 ノイマン氏によると、同社の売上高は2017年に10億ドルを超える見込み。利益については明らかにされていない。
 
 同社のIPO(新規株式公開)に関する憶測も金融業界や投資業界でささやかれ始めているが、ノイマン氏はIPOに関しいっさい話していない。
 
 ソフトバンクは、ウィーワークがIPOを果たした暁には、アリババを筆頭にいくつもの新興企業の上場によって得てきた巨額をまた手にできる。
 
 【http://www.businessinsider.com/wework-tops-20-billion-valuation-2017-7】(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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