IBM、ワトソンをサービスとして提供か

 IBMは、質問応答を可能にした高性能コンピュータ・システム「ワトソン(Watson)」の技術を全製品種に導入する手段の一つとして、クラウド経由サービスとしての提供を検討している。

 業界専門家の一部では、「エクサーズ(XaaS)」の一種として「ワース(WaaS=Watson as a Serive)」の登場か、とはやし立てる動きもある。

 エクサーズとは、サース(SaaS)やアイアース(IaaS)、パース(PaaS)、ダース(DaaS)というように、従来なら実装型システムとして提供されていた資源をクラウド電算によってサービスとしてオンライン提供する業態の総称(Xの部分に、その機能の頭文字を入れる)。

 ワトソンは、自然言語で書かれた膨大な情報を分析し、最も適した解答を短時間で導き出す分析電算システム。2011年には、米国の人気クイズ番組「ジェパディ!(Jeopardy!)」に参戦し、人間のチャンピオンを破ったことで一躍有名になった。

 データ・センター・ノーレッジ誌によると、ワトソンはこれまで特定業務に限定的に商用化されており、たとえば2011年秋に、ワトソン技術に基づく医療サービス用アプリケーションの開発でIBMとウェルポイントが合意した例がある。

 1年前には、シティグループ(Citigroup)がポートフォリオとクライアント・リスクについて助言を得るためにワトソンを「雇用」した。

 ワトソンはクラウド基盤サービスとして提供され、シティグループがワトソン利用によって得る追加収入や経費削減額に対し、IBMがワトソンの「人件費」として一定の報酬を得る。

 2012年初めには、IBMがワトソンをレンセラー工科大学に寄付。同大学は大規模データ(Big Data)やデータ分析、そして認知電算関連の研究開発にワトソンを利用している。

 最近では、南カリフォルニア大学(USC)の学生を対象に、事業や社会問題解決のためにワトソンを利用する事業計画を競う「IBMワトソン・アカデミック・ケース・コンペティション(IBM Watson Academic Case Competition)」が開催された。

 同大会で1位に選ばれた応用案は、弁護士の仕事を軽減するために膨大な量の情報やデータを分析する調査や捜査から重要な事実を発見するというもの。2位は従業員訓練への応用、3位は心的外傷後ストレス障害(PTSD)患者の発見を支援する医師用の応用例だった。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

最近のニュース速報

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 日本では、何においても横並びが良しとされる。小学校への進学時の年齢は決まっているし、学校を...
  2. Water lily 今年は年頭から気にかかっている心配事があった。私は小心なうえに、何事も...
  3. 峡谷に位置するヴァウリアル滝の、春から夏にかけて豪快に水が流れ落ちる美しい光景は必見。島には約16...
  4. 2024年6月3日

    生成AI活用術
    2024年、生成AIのトレンドは? 2017年に発表された「Transformer」...
  5. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  6. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  7. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  8. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
ページ上部へ戻る