ベンチャー・キャピタルがソフトウェアを自ら開発 〜投資先企業の支援に
- 2013年5月28日
- ハイテク情報
ベンチャー・キャピタル(VC)会社は一般に、新興企業に投資することを本業とするが、最近、シリコン・バレーの著名VCのなかには、ソフトウェアやウェブサイトを自ら開発するところが出てきた。
ただ、それらのソフトウェアやウェブサイトは、投資先の新興企業を支援するために開発されたものだ。投資先企業の支援手法をインターネット化するという新たな業界潮流と言える。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、有力VCのセコイア・キャピタル(Sequoia Capital)は2013年初めに、投資先の新興企業を支援するグローブ(Grove)というウェブサイトを立ち上げた。起業家らは、そのサイトを通じて人材を探したり、競合社の動向を調べることができる。
グローブはまた、「ライヴァリティクス(Rivalytics)」という分析ツールも提供する。ライヴァリティクスは、アップル(Apple)やグーグル(Google)が公開するモバイル・アプリケーション関連データのほか、セコイアが投資する新興企業群から得る社外秘データを集約し、モバイル・アプリケーションの利用度合いを分析することで、どのアプリケーションが人気なのかを統計的に割り出し、モバイル・アプリケーションの開発を助ける。
セコイアは以前に、グーグルやリンクトイン(LinkedIn)といった過去に投資した企業が提供するアプリケーションやツール群を組み合わせて使用していたが、それらの機能を統合して、使いやすいソフトウェアとウェブサイトを一括提供できるようにした。それがグローブだ。
一方、セコイアと並ぶ大手VCのクライナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズ(Kleiner Perkins Caufield & Byers)は、独自に開発したウェブ・サービス「ドラッグネット(Dragnet)」を2011年から提供している。同サイトは、各社のアップ・ストアー(モバイル・アプリケーションのダウンロード・サービス)ほか、ニュース・サイトやリンクトインを含む多種多様のウェブサイトからデータを吸い上げて、台頭しつつある新興企業を特定する。
クライナー・パーキンスでは、ドラッグネットのデータを同社が投資する新興企業と共有し、投資先の新興企業が市場動向を把握できるよう支援している。
かたや、ファースト・ラウンド・キャピタル(First Round Capital)も、100万ドル以上を投じて独自のウェブ基盤オンライン・サービスを構築した。ファースト・ラウンドが抱えるベンチャー・キャピタリストや投資先企業は、ファースト・ラウンドが構築したウェブサイト上で様々な質問を投稿できるほか、求職者を検索したり給与を比較したりできる。
一方、VC群が投資先企業を支援するために開発するソフトウェアやウェブサイト、オンライン・サービスをVCに販売する企業も登場している。
たとえば、初期投資専門VCの500スタートアップス(500 Startups)のパートナーだったポール・シン氏は、ダッシュボード・アイオー(Dashboard.io) という企業を立ち上げ、500スタートアップスが投資する新興企業向けに人脈網および協力網を構築するオンライン・サービスを開発した。現在、約50社がそれを活用している。
シン氏によると、同サービスは無料提供されているが、いずれは、各種のデータを比較できる機能やデータ分析機能を加味し、有料化する計画だ。同サービスを利用すると、他社がどのくらいの頻度でコードを開発しているかを比較できる。シン氏は、非上場の新興企業にとってのブルームバーグ(企業および金融情報に特化して企業向けに情報を配信)になることを目指している。
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