患者の心臓のデジタル・ツインで不整脈を治療 〜 ジョンズ・ホプキンスの研究班、手術時間を3時間から30分に

スミソニアン・マガジン誌によると、患者の心臓の仮想複製モデルを構築するデジタル・ツインを活用した術前模擬化が、従来の治療法や術式を大幅に上回る成果を示したことが最近の研究結果によって明らかになった。

▽心室頻拍の患者10人を対象に

デジタル・ツイン(digital twin)は昨今、これまでの製造業からさまざまの業界にその応用範囲が広がっている。医療でのデジタル・ツインは、臓器がさまざまの処置に対してどのように反応するかを模擬化して予想するものだ。がん治療や整形外科手術の分野でその応用研究が進んでいる。

4月1日づけの『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン(New England Journal of Medicine)』に掲載された論文によると、心室頻拍を発症した患者10人を対象に小規模の臨床試験が行われた。心室頻拍とは、心臓下部の心室が速く拍動しすぎて血液を適切に全身に送れなくなる症状だ。

心室頻拍に対する通常の治療法は、アブレイションと呼ばれる手術であり、不規則な電気活動を引き起こす組織を焼灼するという術式だ。アブレイションは、問題箇所の特定がむずかしく、再手術が必要な症例も多い。

▽三次元デジタル・ツインによって原因部位を特定

ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)の研究班は、高解像度MRI(Magnetic Resonance Imaging、磁気共鳴画像法)画像をもとに各患者の心臓の三次元デジタル・ツインを作成した。研究班はそれによって、電気信号の伝達経路を解析し、不整脈の原因部位を特定した。

同大学の生体医学工学者で共同研究者のナタリア・トレヤノヴァ氏は、「患者のデジタル・ツイン上でさまざまの治療筋書きを試すことで、心臓へのダメージを最小化しつつ最適の治療法を主治医に提示できる」と説明した。

論文によると、デジタル・ツインを活用して特定された最適方法の手順によって、通常なら約3時間かかる手術時間が約30分に短縮された。麻酔の長期使用にともなう合併症リスクも低減された。被験者全10人は術後に不整脈が起こらず、手術成功の基準を満たした。

▽成功率100%を達成

術後追跡調査(平均期間1年強)では、8人が薬なしで不整脈なしの状態を維持した。残り二人は手術後1ヵ月以内に心室頻拍をそれぞれ1回経験したが、埋め込み型除細動器が対応し、その後には再発なく抗不整脈薬の用量も減少した。

研究班によると、従来のアブレイション手術の長期成功率が約60%であるのに対し、デジタル・ツインを使った方法では成功率100%を記録した。研究班は今後、より大規模での臨床試験によって有効性をさらに検証する予定だ。

ワシントン大学の心臓電気生理学者バーバク・ナーザー氏は、「それが本当に革新的で有効かどうかは今後の大規模試験で判明するだろう」と述べた。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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