SAP、シリコン・バレー企業の買収を積極化 〜影響力衰退の打開策
- 2013年8月5日
- ハイテク情報
業務用ソフトウェア大手の独SAPは、クラウド電算市場への参入で出遅れ、米国の競合大手との競争で苦戦を強いられるなか、シリコン・バレーの新興企業を積極的に買収することで対抗する路線を鮮明にさせている。
ビジネスウィークによると、SAPは過去41年間にわたって企業資源計画(ERP)および供給網向けソフトウェアの開発を手がけ、それらの世界市場で最大手の一つとして君臨してきたが、クラウド電算の台頭を受けて、近年では、現場実装型ERP全盛時代の存在感が一気に弱まった。
SAPはこれまで、その打開策の一つとして、社内の優秀なプログラマーらを新興企業のプロジェクト・チームのように再配置し活性化を試みたが、その効果が表れるには時間がかかる。
SAPはそれと同時に、23万社という顧客企業にSAPのクラウド電算サービスを売り込もうとしているものの、その売れ行きも今のところあまり芳しくない。
そこでSAPが打開策として考えたのが、シリコン・バレー新興企業を買収することだ。同社は2010年以来、企業買収に総額120億ドルを投じている。2012年には、サニーヴェイル拠点の調達支援ソフトウェア開発企業アリバ(Ariba)を43億で買収し、また、サン・マテオ拠点のクラウド電算ソフトウェア開発大手サクセスファクターズ(SuccessFactors)を33億で買収している。
SAPはさらに、パロ・アルト拠点の協業ソフトウェア開発のジャイブ・ソフトウェア(Jive Software)の買収を検討していると伝えられる。
それと同時に、SAPのベンチャー投資部門も新興企業への投資を積極化させている。SAPのベンチャー部門は新興企業に総額7億ドル以上をすでに投資している。
SAPが新興企業の買収戦略に転じる大きなきっかけとなったのは、2007年に68億ドルを費やした仏ビジネス・オブジェクツ(Business Objects)の買収だと言われる。
業界専門家らによると、SAPはその買収によって開発期間を短縮できるという、投資に対する自信をつけることになったとみられる。
SAPはそれから3年後に、データベース開発大手サイベース(Sybase)を58億ドルで買収した。SAPにとってサイベース買収は、シリコン・バレーにおける初の大型買収となった。
その一方で、SAPの競合社であるオラクル(Oracle)やセールスフォース(Salesforce)、マイクロソフト(Microsoft)、IBMも、自社開発と企業買収によってクラウド製品を拡充させている。
したがって、SAPは、買収した企業が持つ技術を統合して、使いやすいクラウド製品を迅速に開発し提供できるようにしなければならない。
特に、シリコン・バレーの技術業界では有力企業同士による業務提携が近年の傾向となっており、提携による競争力強化に熱心だ。オラクルが従来の競争相手だったセールスフォースと立て続けに提携したことはその典型例であり、それぞれの製品間の互換性を高めることで、SAP製品に対抗する体制を整備している。
SAPの買収戦略は今のところ、オラクルの規模にまでは至っていない。オラクルの場合、2005年以来の買収企業数は100社を超え、買収総額は500億ドルに達する。
一部の専門家らによると、SAPに残された選択肢は限られており、今後も引き続き企業買収を積極化させなければ、米競合社との競争に勝ち残れない。
業界専門家らは、SAPが向こう12〜18ヵ月の間に大型買収をしかけると予想しており、早ければ2013年中にもその動きが表面化する可能性があると考えられる。
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