スプリント、Tモバイルの買収を検討 〜 孫氏、米2大キャリヤーに挑戦か

 スプリント(Sprint)は、TモバイルUS(T-Mobile US)の買収を画策している。

 米携帯電話サービス業界では、ベライゾン・ワイヤレスとAT&Tが圧倒的2強の座にあり、大きく引き離された3位にスプリントが位置し、そのすぐ後ろをTモバイルが追い、そしてまた大きな差で5位のUSセルラーが続く。

 ソフトバンクが約80%を所有するスプリントは、Tモバイルを買収することで勢力を一気に拡大させ、2強に対する競争力を強めようと狙う。ソフトバンクの孫正義最高経営責任者が米国市場で2強に挑戦する強い意欲を明示した格好と言える。

 同業界では、ベライゾンと対抗するAT&TがTモバイルを吸収して業界最大手に躍り出ようとしたことがあるが、突出したキャリヤー(通信サービス事業社)を誕生させることで健全な市場競争が阻まれるという判断から、連邦政府によって拒否されたという経緯がある。

 一方、Tモバイルは、地域向け中堅のメトロPCS(MetroPCS Communications)を買収して勢力拡大を図っている。

 同業界3位のスプリントと4位のTモバイルによる合併であれば、第三勢力を誕生させるという認識のもと、連邦政府から拒否されない可能性は十分にある、という見方も根強い。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、スプリントによるTモバイル買収額は200億ドル(約2兆600億円)を超えることが必至とみられ、スプリントは、独占禁止法に抵触しないと判断されることを見極めたうえで、2014年上半期中に買収手続きの完了を目指す。

 現在、同業界ではベライゾンが1億1800万件、AT&Tが1億0800万件の加入者を抱える。スプリントとTモバイルが合併すれば、加入者数は9700万件に達し、2強に肉薄できる。それと同時に、それら大手3社が米携帯電話サービス市場の大部分を実質的に牛耳ることになる。

 米司法省や公正取引委員会(FTC)が、スプリントとTモバイルの合併を承認するかどうかは現時点では不明。

 匿名希望の関係筋によると、スプリントは、独占禁止法に抵触する可能性が高いと判断できれば、Tモバイルと交渉する前に買収案を断念する方針だ。

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