クアルコムのスマート腕時計に厳しい評価 〜 349ドルを正当化できず

 無線通信用チップ開発大手のクアルコム(Qualcomm)が最近発売したスマート腕時計「トック(Toq)」は、技術界大手による身体装着型デジタル機器として注目されたが、価格と機能の面で厳しい評価を下されている。

 高性能部品を搭載したトックは、アンドロイド搭載スマートフォンと連動し、傘下のクアルコム・テクノロジーズが開発した最新の反射ディスプレイ技術「ミラソル(Mirasol)」を採用した点が最大の特徴かつ売りだ。

 1.55インチのディスプレイは、従来の液晶ディスプレイと異なり太陽光の反射を利用してコンテントを表示する。同技術は数年前から存在したが、クアルコムはメーカーに供給しなかった。トックに搭載するための専有技術としてクアルコムが温存したという指摘もある。

 ミラソルは、光の反射を表示に利用することによって消費電力量を劇的に抑える。また、低電力でカラー表示に対応できることも特徴だ。その結果、従来のディスプレイで必要だった背光が不要になる。

 ただ、トックを試した消費者電子製品専門家らは、カラー表示の質が通常のディスプレイに比べて少し落ちるものの、常時表示状態を可能にし、一度の充電で1週間利用できる点を評価している。

 また、充電池をディスプレイの背面に搭載せず、腕輪の金具部分に取り付けたことで時計本体を薄くした点も評価されている。

 しかし、ビジネスウィーク誌によると、スマート腕時計としてトックの機能はごく一般的な域を出ないという指摘も多い。アンドロイド機器にブルートゥースで接続し、天気予報や株価情報、各種の着信通知を受け取り、音楽再生を制御するといった機能は、競合製品とほぼ同じだ。

 電話機能はなく、携帯機器の補助的な役割を担い、受信通知を確認できても、それに対し返信できない。

 そういった技術仕様から、349ドルという価格設定は高すぎるというのが、専門家たちの判断だ。スマート腕時計の元祖であるペブル(Pebble)やほかの製品の多くは149ドル程度。カラー表示ではないものの、機能やアプリケーションが充実し、iOSにも対応する。

 349ドルという価格は、高級の部品や技術が搭載されているためだが、その高額さを正当化できる機能としては物足りない。それでも、高技術部品を搭載していることから、今後の改良や機能拡充に期待できる余地があるという見方もある。

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