CESのもう一つの顔 〜 スパンション、日系自動車メーカーから契約獲得

 ネバダ州ラスベガスで7日から開かれていた世界最大の消費者電子製品見本市「国際CES(International Consumer Electronics Show)」は、史上最大規模となった約3200社の出展企業と約15万人の来場者を集めて10日に閉幕した。

 CESは一般に、近い将来の技術製品市場の動向を方向づける最新型の電子機器や技術、サービスを技術系企業が披露する派手な業界祭りとして知られるが、主要会場から離れた場所にいくつも設置された地味な個室では、数多くの商談が人知れずまとめられるという非常に重要な商売の場所でもある。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、中堅チップ・メーカーのスパンション(Spansion)のジョン・キスパート最高経営責任者(CEO)は、「今回のCESではたくさん稼がせてもらった」と話す。

 CES期間中に何人もと商談したキスパート氏によると、同氏は今回、日本の自動車メーカーと契約締結にいたった。シリコン・バレー企業幹部にとって自動車メーカーの幹部はこれまで接近しづらい相手だったが、今回のCESでは自動車メーカー幹部らとたくさん接触できた、と同氏は話す。

 ある日系自動車メーカーは、技術者や部品調達責任者、上席幹部らの班を編成し、CESの現場で契約を結ぶ権限を持って参加してきたため、「(商談と契約締結が)信じられないほど効率的だった」「彼らは契約を結ぶためにここに来ていた」と同氏は述べた。

 自動車メーカーは、今回のCESを特徴づけた存在でもある。車載娯楽および情報システムの進化を受けて、メモリー・チップを必要とする自動車メーカーにとってスパンションの製品は魅力的に映ったようだ。

 キスパート氏によると、スパンションは、スマートフォンやタブレットに搭載される種類とは異なる多様なフラッシュ・メモリー・チップを販売するため、自動車メーカーからの関心を集めたという。

 スパンションが扱うメモリー・チップのなかでも、NORと呼ばれるチップは、安定性と寿命という点で車載ITシステムにとって都合が良い。フラッシュ・メモリー製品群のなかではNAND型が最も知られるが、NAND型は消費者製品向けであり、振動が大きく加熱やほこりもある車載環境には向かない。

 スパンションでは、NORチップを20年保証付きで納品することから、ある日系自動車メーカーから評価された。スパンションはそれに加えて、富士通から買収したマイクロコントローラー製造事業で開発したマイクロコントローラーでも自動車メーカーとの取り引きを成立させた。

 スパンションのほかにも、ブロードコム(Broadcom)やサンディスク(SanDisk)、アトメル(Atmel)も、展示ブースでの製品披露よりも主要会場から離れた個室での商談に忙しかった半導体企業だ。

 世界各地から何万人と集まる潜在的な顧客や供給業者と集中的に会える機会は、非常に貴重だと認識されており、パナソニックの津賀一宏社長も、同社がCESに毎年参加する主な理由の一つもそこにある、と話している。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

最近のニュース速報

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 日本では、何においても横並びが良しとされる。小学校への進学時の年齢は決まっているし、学校を...
  2. Water lily 今年は年頭から気にかかっている心配事があった。私は小心なうえに、何事も...
  3. 峡谷に位置するヴァウリアル滝の、春から夏にかけて豪快に水が流れ落ちる美しい光景は必見。島には約16...
  4. 2024年6月3日

    生成AI活用術
    2024年、生成AIのトレンドは? 2017年に発表された「Transformer」...
  5. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  6. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  7. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  8. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
ページ上部へ戻る