アップル、モバイル決済への進出に本腰 〜 ペイパルやグーグルと競合必至

 アップル(Apple)は、アイフォーン(iPhone)とアイパッド(iPad)の膨大な利用者基盤とアイチューンズ(iTunes)ストアーで管理する数億件のクレジット・カード情報を活用し、モバイル決済サービスの強化に向けた準備を開始した。業界関係者が明らかにした。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アップルでアイチューンズとアップ・ストアー(App Store)を率いるエディー・キュー上席副社長はモバイル決済業界の有力者と会談し、同社端末を利用するモバイル決算処理に対するアップルの計画や関心を伝えたもよう。

 アップルはそれと同時に、同社オンライン・ストアー責任者のジェニファー・ベイリー氏を、新設した決済事業構築担当に任命した。

 モバイル決済分野には、イーベイ(eBay)のペイパル(PayPal)やグーグル(Google)をはじめ、スクエア(Square)、ストライプ(Stripe)といったいくつかの新興企業もすでに参入している。アップルの参入によって競争が激化することは必至だ。

 調査会社のフォレスター・リサーチは、米国のモバイル決済取扱額について、2012年の128億ドルから2017年には900億ドルに増加すると予想する。

 モバイル決済に対する投資家の期待は大きく、ストライプは最近、総額8000万ドルを複数のベンチャー・キャピタル会社から調達し、時価総額が17億5000万ドルに達した。

 一方、著名投資家のカール・アイカーン氏は、ペイパルの事業価値を重視し、イーベイに対しペイパルの分社化および上場を要求したばかり。

 アイカーン氏はまた、アップルの株主でもあり、アップルに対しても、モバイル決済分野への投資強化を求めている。

 モバイル決済事業の将来性に寄せられる期待が大きいことを反映した動きと言える。

 アップルは、アイチューンズや特定アプリケーション内でのデジタル製品購入や直販店での一部購入に対し、アイチューンズ口座経由の決済サービスをすでに提供している。

 ただ、それ以外の物理的な物品購入や実世界でのモバイル決済には対応しておらず、消費者は決済のたびにスマートフォン上でクレジット・カード情報を入力する必要がある。

 アップルは、2013年のアイチューンズ・ストアー累積登録者数が5億7500万人に達したことを明らかにしている。アイフォーン販売台数は過去5年間で約3億7500万台、アイパッドは2010年の発売以来1億5500万と報告しており、アップルのモバイル決済市場参入が市場に与える影響ははかりしれない。

 アップルは1月初めに、電話機から無線受信機に発した信号経由の決済技術について特許を申請したことを明らかにしたばかりで、同社のモバイル決済市場参入の憶測が再燃していた。

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