任天堂、DeNAとの提携にかける 〜 モバイル・ゲーム市場進出で再生を狙う

 任天堂の岩田聡社長がスマートフォン向けのゲームを開発するために総額60億ドルという巨額を投資する方針を示したことは、同社株価が36%上昇したことで、好観視されていることがうかがえる。しかし、業界専門家の一部には、同戦略が株式市場で過大評価されているという見方もある。

 ブルームバーグによると、任天堂は、これまで商敵だったソーシャル・ネットワーク・ゲーム開発大手DeNAと提携したことで、モバイル・ゲーム市場に参入することに踏み切った。

 任天堂はそれによって、同社のゲーム・キャラクター群をDeNAとのモバイル・ゲーム開発に転用し、新たなゲーム・ソフトウェアや会員サービスを開発する計画だ。同社は、ウィー・ユー(Wii U)や3DSからモバイル仕様に移植するのではなく、スマートフォン環境に完全対応するよう設計し直す方針だ。

 任天堂とDeNAはまた、各種のゲームをアップル(Apple)のアイフォーン(iPhone)とサムスン(Samsung)のギャラクシー(Galaxy)向けに配信する方針だ。新たなゲームは2015年秋にも発売される見通し。

 任天堂は、消費者の嗜好がスマートフォン基盤のゲームに移行したにもかかわらず、ゲーム専用機事業に固執したため大きな損失を強いられた。遅きに失したとは言え、任天堂は今回、DeNAとの提携に踏み込むという軌道修正によって、モバイル・ゲーム市場にようやく進出する。

 ただ、モバイル・ゲーム市場では、欧州と米国の強豪ゲーム・メーカーたちが数々のヒット作を相次いで出しており、過剰競争の状態にある。しかも、利益を出しているゲームは上位の一部に限られている。

 それらの主要作品群には、「クラッシュ・オブ・クラン」や「キャンディ・クラッシュ」「パズル&ドラゴン」があり、それらのゲームに挑むことになる。

 SMBC日興証券のゲーム業界専門家によると、任天堂の新戦略が成功した暁には、2017年度(3月締め)に4億9800万ドルの営業利益がもたらされる可能性がある。

 任天堂は2015年1月に、同社の携帯ゲーム機「3DS」の年間売り上げ目標を25%引き下げ、900万台に下方修正した。ウィー・ユーについては360万台に設定されている。

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