アマゾンとグーグル、DNAで激突 〜 データのクラウド管理サービス競争

 アマゾン(Amazon)とグーグル(Google)は現在、ヒト遺伝子(DNA)の解析データを保管するクラウド・サービスで激烈な競争を展開している。

 ロイター通信によると、DNA情報ビジネス市場は2018年までに年間10億ドル規模に成長する可能性がある。

 学術機関や医療関連企業は、グーグル・ジェノミクス(Google Genomics)派とアマゾン・ウェブ・サービシズ(Amazon Web Services)派に分かれてクラウド・サービスを選択している。両社は、一方が大きな契約を取るたびに相手を一歩リードするかたちで競争に拍車をかけている。

 遺伝子サービス事業の成長は、個別化医療の推進も原動力になっている。サービスを必要とする企業や組織は、遺伝子データを自前のコンピュータで保管するよりグーグルやアマゾンのシステムを使った方が情報の安全確保やコスト抑制、共有の便利さといった面で優れていると考えるようになった。

 クラウド・サービス企業は、DNAデータの保管だけでなく解析サービスも提供しており、市場には両社のほかマイクロソフトやIBMも参加している。

 投資銀行FBRキャピタルの専門家は、クラウド基盤のゲノム情報サービス市場が現在の1億〜3億ドルから2018年までには10億ドルに成長すると予想。また、クラウド市場全体の年間売上高は現在の約300億ドルから500億〜750億ドルになると予想する。

 アマゾンとグーグルが同事業をいかに重視しているかは、解析が完了した有名な遺伝子データ群を無料で管理することで、新規顧客の獲得を狙っていることをみても分かる。

 たとえば、人間の1%以上が持つ遺伝子変異を特定した国際的な官民共同事業「1000ゲノムズ・プロジェクト」のデータは、両社のサーバーで無料公開されている。

 一つの完全なヒト・ゲノムの保管料はアマゾンが月約4〜5ドル、グーグルは約3〜5ドル。また、保管データに解析ソフトウェアを使った際はデータ転送や計算時間に課金される。アマゾンのデータベース解析ツール「レッドシフト」の使用料は、1時間あたり25セントまたは年間1000ドル(最大1テラバイトまで)。

 両社は、解析ツールを使うことで、理想的な薬や病気の発症リスクを高い確率で予測できるDNA変異といった「宝の山」を見つけることも可能と売り込んでいる。

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