米技術企業、イラン人の採用に注目 〜 核問題合意で人材確保の障害が撤廃

 核問題でイランと米国が合意したことで、イランからの技術者を米国企業が雇う機会が拡大するとみられる。

 人口8000万人のイランには、シャリフ工科大学(Sharif University of Technology)やテヘラン大学(Tehran University)といった世界有数の優秀な教育機関がある。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ピンタレスト(Pinterest)の人材採用責任者アダム・ワード氏は、「(合意によって)新卒者だけでなく、イラン国民の米国就労ビザ取得が格段にスムーズになる」と期待する。

 フェイスブック(Facebook)の人材採用部長でもあったワード氏は、米国で求職するイラン人学生は、スタンフォード大学(Stanford University)やマサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)といった米国の有名大学にも多いと指摘する。

 これまでは、そういった優秀な学生でも、イラン国籍という理由で就労ビザの取得が難しかった、と同氏は振り返る。

 2014年には、170人のイラン人がH-1B(特殊技能就労)ビザを取得した。かたやインド人に対しては、同時期に10万8817件の就労ビザが発給された。イラン人の就労ビザ取得件数は、ネパール人の585件よりも少ない。

 テヘランの米国大使館は、1979年のイラン革命以降、閉鎖されており、イラン人にとって米国ビザ取得は容易ではない。米国企業も情報セキュリティーや通信技術、電子機器といった輸出規制対象業界でイラン人を雇用するためには、輸出管理ライセンスを取得する必要がある。

 また、2002年に成立したエンハンスト国境セキュリティー査証改革法(Enhanced Border Security and Visa Reform Act)によって、イランからの採用候補者については、米国の国家安全に脅威とならないことを国務省が判断し承認するという手続きが規定されている。

 今回の米国=イラン間合意は、イラン人採用にかかわる「不透明感」を払拭し、需要の高いIT人材を補充する可能性があると期待される。

 シリコン・バレーの大手IT企業は、イランの技術系人材にすでに注目している。グーグル(Google)は、シャリフ大学卒業生をすでに70人以上採用している。

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