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第40回 子育ての目標?
文/松本輝彦(Text by Teruhiko Matsumoto)
- 2015年1月5日
「25歳で、経済的・社会的に自立して、自分の希望する道を進めるように、子どもを育てる」を、「子育ての目標」として提案します。
25歳
かつて、アメリカでは、「16歳の誕生日」を盛大に祝って「自立のトレーニング」を始め、18歳でカレッジに進むと「自立」して親の手を離れるように、家庭で教育をしてきました。この自立の年齢が時代と共に高くなってきており、アメリカ人の友人によると「大学卒業後、最近では25歳くらい」とのことでした。
日本でも、今からたった50年前には、中学や高校を卒業して「一人前」になり、社会的に独立していました。しかし、現在では、アメリカ同様、大学卒業・就職して、社会人として独り立ちする年齢は25歳前後ではないでしょうか。この自立の年齢が高くなった理由は、社会の要求が高くなり高学歴化が進んだことや、大学教育の大衆化の結果だと思われます。
経済的自立
文字通り「子どもが、自分の稼ぎだけで生活できる」ことです。先日、「大学卒の初任給が20万400円」という日本の新聞報道がありました。少し想像してみてください。東京にアパートを借りて、着て、食べて、たまにはデートもして。そんな生活を、この初任給から税金や諸経費を引かれた手取り額で可能だと思いますか。「自宅から通うか、会社の寮に入らなきゃ無理。僕は、入社後、3年ほど親に仕送りしてもらった」と、かつての教え子が言っていました。
アメリカの場合は、日本のように横並びの初任給ではなく、職種によって大きな差があるので、単純に比較はできません。しかし、「大学卒業後就いた仕事の給料だけでは生活できないので、セカンドジョブを持っている」若者の話を何度も聞きました。また、大学卒業後、自分のキャリアを築くための就職で要求される「3年の経験」を積むための職探し自体が大変な状況です。さらに、学歴によって給与差の大きい「学歴主義」のアメリカですが、競争が激しく、学費が高額な大学に入学することすら大変なことは、周知のことです。
自分の希望する道
大学進学に当たって、「子どもの希望を生かしたいのだが、大学で何を勉強したいか答えられない」と、高校生の将来への希望・進路の欠如を嘆く保護者が多くおられます。
保護者の皆さんが高校生の時(仮に30年前)には、日本は「大学を卒業すれば、道が開ける」という時代でした。しかし、IT化・グローバル化が急激に進んで多様性の増した、また10年・20年先が自信を持って見通せない不確定な要素の多い、昨今です。さらに、大学進学率(専門学校を含む)が80%近くにもなった日本では、ほとんどが大学卒業者で、皆さんの時代のように「道が開ける」状況ではありません。皆さん自身すら、「お子さんが25歳になった時に、この仕事を選んでおけば、間違いない」と勧められる職業や進路を示せるでしょうか?
この多様性・不確定な時代に、「18歳で人生を決める」ことが、いかに大変か、ご理解ください。
読者の皆様は、現在、子育てや学校の勉強(成績)、日本語と英語、大学進学など、様々な子どもの教育についての悩みをお持ちだと思います。残念ながら、その悩みはしばらく続きます。
しかし、それらの目先の問題から一度離れて、「何のための子育て・学校・進学なのか」を、ご家族で考えてみてください。その視点からお子さんの教育問題を見直すと、お子さん一人ひとりの育て方、すなわち「子育ての目標」が見えてくると信じます。私から、皆様への新年のご挨拶代わりのお勧めです。
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