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第44回 世界の大学教育-
米国流の急激な広がり
文/松本輝彦(Text by Teruhiko Matsumoto)
- 2015年5月5日
大学生の急増
英エコノミスト誌は、「大衆向けの高等教育は米国で19世紀に始まり、20世紀には欧州と東アジアに広がり、現在ではサハラ以南のアフリカを除く世界のほぼ全域で見られる」と、「大学の大衆化」の地球的な広がりを指摘しています。さらに「世界全体の高等教育進学率(大学に通う年齢の若者全体に大学生が占める割合)は、2012年までの20年間で14%から32%に上昇した。同じ期間に、この進学率が50%を超える国の数は5カ国から54カ国までに急増した」と、世界の大学進学者の割合を具体的に挙げています。そして、大学教育が「最近では、学位はまともな仕事に就くための必須条件であり、中流階級への入場券と化している」とその増加の動機を述べています。
大学教育:欧州型VS米国流
欧州型の大学制度では、大学進学者の割合が少ないので、国が資金を出すことができて授業料も安く、大学の地位は横並びです。極めて少数の学生に対して、個人的な指導を徹底する教育が主流でした。
それに比べて、「競争原理を取り入れ、学生に授業料を課す」米国流大学教育では、「頂点には潤沢な資金を持つ優秀な教育機関が、底辺にはそれほど資金に恵まれない機関が位置している」が、極めて多くの学生の指導・教育と、研究機関としての役割を大学が果たしています。そして、学生に授業料を課す大学がますます多くの国で増加しており、世界の大学は米国流が主流となってきています。
世界の大学教育の流れ
この米国流の高等教育の広がりの背景には、知的財産により経済発展を目指すためには、トップクラスの研究が欠かせないという、多くの国や政治家の考えがあります。公的な人材や資金を少数の大学、教育、研究機関に集中的に投下し、世界レベルの大学をつくり上げようと、世界の国や大学間の競争が激しくなっています。先端研究・開発を担える人材の確保のための、優秀な国内の学生の確保・教育だけではなく、世界の国々からの優秀な留学生の、国や大学間の奪い合いが、その良い例です。
米国では、世界の国々の中での最先端の教育と研究の総合的なレベルが維持されています。その結果として、どの世界の大学ランキングでも、トップレベルの大学に多くの米大学がリストされています。
しかし、この米国流の教育や研究には、多大な費用がかかります。その結果が、米国流大学教育の高額な授業料となって表れてきています。ドイツの公立大学では15万円程度の授業料で学べますが、米国の大学の授業料は州立で年1万ドル、私立で年3万ドルが一般的です。
日本の現状
国の教育行政を一手に担う文部科学省の主導による様々な、高等教育改革のためのプログラムが数多く提案され実施に移されています。しかし、日本の大学の頂点に立ち、膨大な税金が投入されている東京大学は、主要な世界大学ランキングでじりじりとその順位を下げてきています。東大が教員を世界中に派遣して世界の優秀学生を募集するための特別入試合格者の入学辞退が3割を超えていることが示すように、世界の学生の確保に苦戦しています。日本の大学教育が、米国の高等教育と互角に戦える日が来るのでしょうか。
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