海外在住者が知っておくと役立つ日本の戸籍謄本と住民票について

文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)

海外に長く暮らしていても日本人(外国籍取得者を含む)であれば、日本の戸籍謄本や住民票についてご存じだと思います。しかしその内容、違い、種類、取得手続きについてご存じの方はそう多くないと思います。そこで今回、そうした情報を紹介したいと思います。

戸籍と戸籍謄本(抄本)とは?

戸籍は親族的な身分関係(具体的には人の出生・死亡・婚姻・離婚・縁組などのこと)ならびに日本人の国籍に関する事項を登録・公証する公文書です。登録する際には家族集団単位(これを「戸」といいます)で登録します。

この時、戸籍の最初に記載する人を「筆頭者」といい、結婚した際に夫の姓を選べば夫、妻の姓を選べば妻が筆頭者になります。家族集団単位なので、通常こどもの頃は親(一般的には父親)が筆頭者の戸籍に入り、結婚して独立すると自分または配偶者が筆頭者の新しい戸籍を作ります。その際の住所(本籍地といいます)は任意に指定できます。

戸籍の公文書には「戸籍謄本」と「戸籍抄本」の2種類があります。戸籍謄本は戸籍の全員、戸籍抄本は戸籍の一部の人の証明書となります。

戸籍は日本国籍の人のみ作成、登録(入籍)できることから、日本人としての証明になります。したがって、日本のパスポートの申請や更新の際に必要となります。海外在住者でも日本国籍であれば戸籍があるので、必要な時に本籍地住所の市町村役場で戸籍謄本(抄本)を取得することができます。

また、戸籍から抜けることを除籍といいます。もともと親の戸籍に入っていたが、結婚して自分(または配偶者)が筆頭者の新しい戸籍を作ったり、婚姻相手の戸籍に入籍したりする場合は、親の戸籍から除籍されます。そして親の戸籍には「○年○月○○との婚姻により除籍」と記載されます。除籍された後に相続などで身分関係を証明するような際には、戸籍謄本ではなく除籍謄本を取得して証明することになります。

海外在住者でも日本国籍であれば戸籍はありますが、外国籍を取得した場合、日本国籍を放棄すれば戸籍は削除され、除籍扱いとなります。ただ、外国籍を取得したものの日本国籍を放棄していなければ日本の戸籍は残ったままで、本籍地の市町村役場で引き続き戸籍謄本(抄本)を取得することができます。この点について、日本政府は二重国籍を認めていないので本来戸籍は存在しないはず(除籍扱い)なのですが、実際は市町村役場で取得できるようです。

なお、「改製原戸籍」は以前の戸籍制度による戸籍謄本(抄本)です。現在の戸籍制度は夫婦を戸籍の基本単位としていますが、以前の制度では「家」を単位としているので、改製原戸籍謄本を見ると記載者の数が多くなることがあります。

また、似たような名前に「戸籍の附票」がありますが、これは戸籍が作られてから(またはその戸籍に入籍してから)現在に至るまで(またはその戸籍から除籍されるまで)の住所が記録されています。次項で説明する住民票とは異なるものです。海外在住者の場合、日本の年金の請求時に必要となる場合があります。

このように、戸籍については相続手続き等で必要となるものです。必要な時にすぐに入手できるよう、本籍地住所(除籍した人は最後の本籍地住所)を知らない人は今のうちに親族等へ聞いて確認しておくことをおすすめします。

住民票とは?

一方、住民票は日本の各地域(市町村等の地方自治体)における住民一人ひとりの記録です。各市町村ごとに住民基本台帳(現在は電子化されています)があって、住民票の写しは居住関係(氏名、性別、生年月日、住所、世帯主、世帯主との続柄など)を証明する公文書となります。もともと日本人のみ記録されていたものですが、2012年から外国人(在留資格を取得した中長期滞在者、永住者)も住民基本台帳に記録されることになりました。つまり国籍は関係ありません。

住民票があること(つまり住民基本台帳に記録されること)は、生活の基本となります。たとえばある地域から転居(転入)してきた場合、その地域で住所登録する(住民票を移す)ことで新しい健康保険、介護保険、国民年金に加入することになります。また銀行口座の開設や携帯電話の加入の際、各種契約時の場合でも住民票が必要となります。外国人が在留資格(在留カード)を取得して住所登録すれば、保険や年金に加入できます。また、マイナンバーも住民票がある人に付与されます。したがって、住民票がないと生活はできません。

登録する住所には制限はなく、どこでも住所とすることができます。外国人が日本に居住する場合、まだ住居が決まっていなければ、一時的に居住する知人の家やホテルを住所として登録することも可能です(ただし、後日住居が決まったら転居届を提出して住民票の変更が必要)。

海外在住者でも、定期的に日本での生活が必要であれば住民票を残しておくことはできます。たとえば、仕事や親の介護で1年のうち数カ月を日本で暮らすような場合です。この場合は両国で住所登録されるので、医療保険や年金(Social Security)は両方の国で納めることになります(ただし、その分の給付サービスを受けることができます)。

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、介護・葬儀・相続など日本在住の老親のサポート)を行う。

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