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第46回 現地校での伝える力の指導
文/松本輝彦(Text by Teruhiko Matsumoto)
- 2015年8月5日
「伝える」力は、アメリカでは「民主主義を守る」「アカデミック力を伸ばす」ために大切なものです。現地校では、子どもの発達段階に応じて、このスキルのトレーニングが繰り返されます。
ショー&テル

photo © US Department of Education
幼稚園(キンダー)の「ショー&テル」で「人前で話す」と「人の話を聞く」というトレーニングを始めます。初めての「ショー&テル」は5歳で経験し、友だちの前で、自分の宝物を見せて紹介します。
「人前で話す」トレーニングの最初は、プレッシャーに打ち勝っての宝物の説明です。友だちにとっては、「人の話を静かに聞く」トレーニングです。説明がひと通り終わると、先生が「質問はありませんか」と子どもたちに声をかけます。「質疑応答」トレーニングの第一歩です。
子どもたちは、キンダーから2年生までの3年間に、少なくとも20回は発表したと言います。1クラス20名なら4百回近く聞くことになります。
「ショー&テル」で始められた「発表する」「発表を聞く」トレーニングは、小学校に入っても教科学習の中で日常的に続けられます。
プレゼンテーション
小学校4年生くらいになると、「調べて、発表する」という活動が始まります。各教科の学習内容に関係した事物を、様々な方法で調べて、レポートにまとめ、それをプレゼンテーションとして発表するものです。パネルやポスターを作って、授業や学校の行事で、他の子どもや先生を相手に発表し、質問に答えるのです。
このようなプレゼンテーションは、中学校で本格化し高校まで、日常的に各教科の授業の中で続けられ、「自分の意見を、人に説得力を持って伝える」というスキルが必要です。
ディベート
高校になると、ディベートの形式での授業が展開されます。日本人高校生の体験でよく語られる例では、アメリカ史で第二次世界大戦について学んだあと、「原子爆弾を日本に投下したのは、歴史的に見て正しかったか」というテーマで、クラスの右半分は「正しかった」、左半分は「間違いだった」と主張する意見を決めてのディスカッションがあります。
まず、授業で学んだ歴史上の事実や背景の知識を整理します。そして、それらの知識をもとに、自分の側の意見を主張する論点を決め、それを発表します。その発表を聞いた反対側の意見の生徒は、自分の論点に反論をしてきます。その反論に対して再反論、と続きます。
ディベート授業では、学習事項のより深い理解と、上に示したスキルを繰り返しトレーニングすること、を直接の目的としています。より広い意味では、民主主義で必要な「合意形成」やアカデミックな「問題解決」の一方法のトレーニングにもなります。
ディスカッション
生徒に意見を発表させ、お互いに議論をさせる「ディスカッション」形式の授業は、アメリカの中学校以降の教科学習で頻繁に行われています。「意見を述べる」「意見を聞く」だけではなく、「お互いの意見を戦わせて、いろいろと検討を加えていくことにより、最終的に何らかの結論・合意を目指す」練習です。
ディスカッションは、これらのスキルに加えて、学習事項のより深い理解、「自分とは異なった意見やものの見方を知り、検討する」という能力を伸ばす目的もあります。
ここで紹介した「伝える力」のトレーニングが、アメリカの小学校から大学までの教育の中で、「民主主義を守る」「アカデミック力を伸ばす」ために、いかに大きな力を持っているか、いかに重要なものかがお分かり頂けたと思います。
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