EV時代もガソリンスタンドは重要拠点に

全米規模の充電ネットワーク構築を目指し、5年間で50億ドルを投じる連邦政府のプログラムを通じて、多くのガソリンスタンドやトラベルセンター(給油所、飲食・休憩所を備えた施設)が資金を受け取っている。将来は今の給油所の多くが電気自動車(EV)の充電拠点になる可能性が高い。

◇助成対象の4割占める

オートモーティブ・ニュースによると、5月28日現在で234件のトラベルセンターとガソリンスタンドが連邦プログラムの資金を受け取っており、これは支給対象全体の40%に相当することが、市場分析EVアダプションの調査で分かった。政府はこのプログラムによって、主要幹線道路沿いの50マイルごと、および高速道路の出口から1マイル圏内に充電器を設置したいと考えており、充電所は同時に4台のEVを充電できなければならず、州によっては24時間営業の設備やプルスルー(前向きで駐車し、そのまま発進できる)レーンなど、特定の機能を備えることも要求される。

トラベルセンター大手ラブズ・トラベル・ストップス傘下トリリウム・エナジーのライアン・エリクソン副社長は、トラベルセンターはその立地と提供する商品やサービスから、EVの充電では独特な位置を占めると見ており「州間道路沿いの主要地点には必ずトラベルセンターがある。各社ともすでにそこで車での移動に必要なサービスを提供している」と話した。300を超える拠点を持つラブズは2017年、EV充電の試験サービスを開始し、今では計90台の充電器を設置した。EVアダプションによると、ラブズの拠点はこれまでに50カ所が連邦プログラムの対象になっている。

◇早く採算ベースに

ただし、EV充電所は採算が取れるまでに時間がかかることもあり、ラブズは「最悪の場合、そこで充電するたった1台の車のために月に3000ドルを支出する可能性もある」(エリクソン氏)と見ている。

充電器の利用が少ない理由は主に二つあり、ほとんどのEV所有者は定期的に自宅で充電している上、ほとんどの州ではまだEVの台数自体が少ない。それでもEVアダプションの試算では、ほとんどの充電事業者は4~5年で採算が取れ、連邦政府の資金援助があればその期間を1~2年短縮できる可能性がある。

研究機関トランスポーテーション・エナジー・インスティチュート(TEI、本部バージニア州)の5月の調査によると、ほとんどのEVドライバーは公共充電所で30分~1時間かけて車を充電しており、EVドライバーの3分の1近くは充電中に軽食や飲み物を購入している。

◇2位はテスラ

トラベルセンター大手のラブズとパイロット、BPパルスは連邦の資金を獲得した企業の上位5社に入っているが、1位と2社はEV充電事業者フランシス・エナジー(12.6%)とEVメーカー大手テスラ(12.1%)だった。しかし、テスラは充電部門の約500人を解雇したばかりで、同社の世界供給責任者は設備業者やサプライヤーに対し、新規の建設プロジェクトは保留にして資材の購入を中止するよう要請しているため、今後の見通しは不透明。

EVゴー、チャージポイント、エレクトリファイ・アメリカなどの充電サービス大手は、トラベルセンターやガソリンスタンドに協力して機器を設置しているが、自身は連邦からの資金援助を申請していない。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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