ガラパゴスの旅〜後編

文/矢田侑三(Text by Yuzo Yada)
写真/カズ高橋(Photos by Kaz Takahashi)

エクアドルの首都キトから飛行機で4時間。南米大陸から1千キロ離れたガラパゴス諸島。太古から独自の進化をとげ、他では見られない珍しい生き物が生息している。子供の頃から、一度は訪れたいという長年の夢がようやく実現した。

 

とても珍しいハイブリッド・イグアナ、海イグアナと陸イグアナの混血で鋭い爪で木に登ることができる Photo © Kaz Takahashi

とても珍しいハイブリッド・イグアナ、海イグアナと陸イグアナの混血で鋭い爪で木に登ることができる
Photo © Kaz Takahashi

6日目

  • サンタフェ島

  • サウスプラザ島

 海の動物にも興奮させられる。サンタフェ島に上陸すると、真っ白な砂浜でアシカの家族が20頭ほどたわむれていた。数頭の母親が集団で子供を遊ばせている。まるでアシカの幼稚園だ。

 浜辺の近くの岩礁でシュノーケルをしていると、10頭以上のアシカが泳いでいた。餌を取っているというより仲間同士でじゃれ合って泳ぎを楽しんでいるようだ。静かにアシカの群れに近づく。逃げないどころか、泳ぎがうまいだろうと自慢するように体をくねらせて私の周りを泳ぎ回る。手を伸ばすとアシカの背中に一瞬触れる。そしてすーと遠ざかっていく。海中でアシカと一緒に泳げるなんて、なんと素敵な体験だろうか。感動する。

 サウスプラザ島では、上陸すると直ぐに大きなウチワサボテンの木があり、その下に陸イグアナが10数匹群がっていた。落ちてきたサボテンの葉を取りあっている。サボテンが彼らの重要な食糧だ。

 1本のウチワサボテンの木の枝にイグアナが1匹止まっていた。ガイドによるとこれはハイブリッド・イグアナでとても珍しい。サンタクルス島の海イグアナ(これは大型)が、この島の雌の陸イグアナと交配してできたという。海イグアナは鋭い爪を持っているので、陸イグアナと違って木に登る。色は陸イグアナのような黄色でなく、海イグアナに近いグレーの濃淡の縞模様が背中にある。

 赤い日本のポーチュラカに似た草が一面に生えていた。地面が燃えているようだ。ワシの一種のガラパゴス・ノスリのつがいが、ウチワサボテンの木に止まって周りを見回していた。
島の南側は断崖絶壁になっていて、赤目カモメや軍艦鳥が巣を作り、赤足熱帯鳥が長い尻尾をたなびかせて飛んでいる。まさに鳥の楽園だ。
 

7日目

  • ノースセイモア島

  • サンタクルス島

 ノースセイモア島に上陸。小さな島で島の大半が軍艦鳥の営巣地になっている。雄は喉が赤く、雌を誘惑するために赤い喉を膨らませ、時々羽を広げ甲高い声で啼く。喉が白い雌は、雄の誘惑の動作を見ている。1週間お互いを見定めてから交配する。真っ白な綿毛のような体をした赤ちゃんの軍艦鳥も見られる。

 トレイルを歩いていると青足カツオ鳥のつがいに出合った。雄が青い足を交互にあげて、尻尾を立ててダンスを始める。雌は素知らぬ顔をしているが、少しすると気に入ったのか、やおら青い足を同じリズムで動かす。そして互いにクチバシを絡ませ甲高い声で啼く。これでカップルが成立だ。とても滑稽な動作に吹き出してしまった。

足を上げて滑稽な青足カツオ鳥の求愛ダンス Photo © Kaz Takahashi

足を上げて滑稽な青足カツオ鳥の求愛ダンス
Photo © Kaz Takahashi

8日目

  • サンクリストバル島

  • キト

 船は最後の目的地サンクリストバル島に到着。今日で楽しかったクルーズも終わりだ。港沿いに商店街、レストラン、ホテルなどがある。昼まで自由時間なので街をぶらぶらする。アシカがベンチや道路に寝そべっている。まるで彼らの街のようだ。でも、臭いがきつい。

 喫茶店で地元のスイーツを食べてのんびり今までの出来事を反芻する。初めは74歳の私にとっては体力的にクルーズのアクティビティーについていけるか心配したが、それも杞憂に終わった。ほとんどすべてに参加できたばかりでなく、大いに楽しめた。これほど興奮、感動した旅は初めてだ。

 飛行機がサンクリストバル島の空港を飛び立ち、ガラパゴス諸島の旅が無事終了。この旅に備えて体力作りをした甲斐があったということだろう。まだまだ気は若い。次回はどんな旅が待っているか。それに備えてまた日々鍛錬しておこうと思った。
 

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