新型コロナウイルスの感染拡大で実店舗への客足が途絶えた小売店にとって、オンライン通販の売り上げ増加は救いかもしれないが、eコマース関連のコスト の高さが悩みの種となっている。
■低い利益率
ロイター通信によると、eコマースはマーケティングから注文履行、配送までそれぞれの過程で多額の費用がかかり、小売店は利益率の高い店内販売でそれを補うことが多いが、最近は大量の売れ残り品に対する評価損、オンライン販売の利益率の低さが業績に影響を及ぼしている。
信用格付け機関S&Pグローバルによると、最も打撃が大きい必需品以外を扱う小売店(モール主体の衣料品チェーンを含む)は、eコマースへの移行で2020年の平均利益率が前年のほぼ半分になる可能性が高い。市場調査グローバル・リテールのニール・ソーンダース・マネジングディレクターは「小売店は常にオンライン販売で利益率を大きく落としてきた。今は実店舗の閉店が増え、オンラインの買い物が多くなったことで損失が爆発的に増加している」と指摘する。
市場調査イーマーケター(eMarketer)によると、米国では長い間、小売売上高の80%以上を実店舗が占めてきたが、コロナ感染拡大で買い物のオンラインへのシフトが加速した後は、ガソリンと自動車を除く小売売上高のeコマースの構成比が22.9%に拡大した。カリフォルニアなどでは7月中旬現在、感染者の急増で屋内のショッピングモールが閉鎖され、低コストの対面販売はさらに減っている。
実店舗のほぼ18%がカリフォルニアにある百貨店メイシーズの場合、5月2日締め四半期に35億8000万ドルもの損失を計上し、粗利益率は前年同期より21ポイント以上低下の17.1%に落ち込んだ。ジェフ・ジェネットCEOは「感染が記録的に増えているテキサス、フロリダ、アリゾナでは実店舗の業績が非常に悪化し、ドットコム事業は改善している」と話した。
■コストは10-15%割高
市場調査RSRリサーチのポーラ・ローゼンブラム氏によると、一般的にオンライン販売は、買った物を客が自分で家まで運ぶ実店舗販売に比べて約10~15%高いコストがかかる。この推定値には返品が含まれていないが、買い物客が買う前に商品をよく見たり、触れたり、試着したりできないeコマースでは返品が多いのが一般的だ。
アマゾンやウォルマートなど潤沢な資金を持つ企業は、eコマース関連の費用を減らすため自動化や在庫追跡などの取り組むに多額をつぎ込めるが、大部分の企業にそんな余裕はない。小売大手ターゲットの場合、感染拡大の初期には実店舗を開けていたが、ウェブ通販が141%も急増した第1四半期は、粗利益率が4.5%も減少した。
同社は衣料品の評価損、利益率の低い食品や必需品へのシフト、そしてデジタル注文履行とサプライチェーン・コストの上昇を原因に挙げており、ジョン・マリガン最高業務責任者(COO)は「第1四半期のデジタル販売は3年後の予想を上回るほどの伸びで、当社にとって極端なテストになった」と話している。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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