人材資源(human resources=HR)管理向けの人工知能技術は昨今、増えているものの、導入に際しては注意点も多く、人の手と自動化ソリューションの均衡を最適化させた活用が求められる。
ベンチャービート誌によると、HR業務(福利厚生のほか、昇進や降格、採用にともなう種々の判断および手続き)は、社内各部署のなかで自動化が遅れ気味であることから自動化の余地が大きい分野の一つだ。HRには、時間のかかる煩雑な処理過程が多く、また、利益を計上する部署ではないためコスト統制の圧力もかかる。それと同時に、HRには複雑な判断を必要とする業務が多く、人間でなければできないことも多い。
業務自動化サービスを提供しているバージニア州拠点の新興企業サードエラ(Thirdera)のジェフ・グレゴリー最高情報責任者は、HR向け自動化技術について、軽々しく導入すべきではないと話している。たとえば、従業員がHR関連の情報を探している場合、その質問に人工知能で対応するには、従業員の聞き方が明確でなくても的確に答えられるよう、社内の処理過程や事業資源を人工知能が使いこなせるほど洗練されなければならない、と同氏は指摘する。
また、人工知能が労務関連訴訟の原因にならないよう気をつける必要がある、とDCIコンサルティング・グループ(DCI Consulting Group)のエリック・ダンリーヴィー氏と法律事務所ジャクソン・ルイス(Jackson Lewis)のミシェル・ダンカン弁護士は指摘する。
人工知能が人種や性別、年齢といった要因にもとづく偏向を示した例は枚挙に暇がない。書類審査やソーシャル・メディア採掘(人物情報の掘り起こし)に人工知能を使うことは可能だが、採用や昇格の決定を機械任せにすることは危険だ。
HR業務のなかで人工知能がもっとも大きな影響力を持つのは、人材採用活動や従業員向けのセルフサービスよりも、むしろ分析かもしれない。従業員の離職率といったデータを集めて、その理由を理解するために掘り下げるといった使い方が考えられる。最終的には「勘」に頼るのではなく、データにもとづく意思決定がHRの現場で主流になる可能性はある。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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