データ分析がコロナ禍の臨床現場で活躍 ~ ダラスのパークランド病院が示すデジタル技術活用の成果

 フォーブス誌によると、テキサス州ダラスにあるパークランド病院は、新型コロナウイルス感染症が急拡大した2020年に、データ分析を臨床現場に活用することで、コロナ患者らの対応に追われる環境において大きな成果をあげた。

▽現場で決定的に重要になったダッシュボード

パークランド病院(Parkland Hospital)は、2020年春に都市封鎖(ロックダウン)が始まった当初から、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に関するデジタル・ダッシュボードを臨床現場に設置して、報告症例数や空き病床数、個人用保護具(personal protective equipment=PPE)の残り個数といったさまざまの情報を毎時間更新して表示した。

予定されていた保守管理作業のために同ダッシュボードが数時間使えなくなった際には、早急での復旧を求める要請が現場スタッフからあいついだ。

同病院のスコット・ハリソン最高データ責任者は、現場スタッフが実際にダッシュボードを活用して生死にかかわる意思決定をくだしていることがそれによって証明された、と説明する。同氏によると、「データ分析がこの種の役割りを果たすことは、それほど多くない」。

マサチューセッツ工科大学(MIT)で最近開かれたシンポジウムにおいて、同氏はパークランド病院がどのような経緯を経て現在のデータ活用のあり方に至ったかを説明した。

▽1998年から電子化に取り組む

パークランド病院には127年の歴史があり、テキサス州で2番目に大きい郡立病院だ。1963年にケネディ大統領が暗殺された際にも同病院に運び込まれた。いまでは年間100万人の外来患者があり、24万人の急患に対応している。

ハリソン氏によると、同病院は1998年に統合的な電子医療記録の最初の構成部分を導入した。それが本格的なデジタル技術導入の最初の一歩だった、と同氏は考えている。米国で電子医療記録が主流になったのは2014年ころのことだ。

同病院の電子医療記録は当初、オラクルのデータベースに保管され、クリスタル・リポーツ(Crystal Reports)で報告されていた。同病院は、2015年にSAPのハナ(HANA)に移行し、データベースを中央のデータ・ウェアハウスに統合した。

▽データ分析に照準

パークランド病院は、SAPへの移行と同時に、近代的なデータ分析機能を追求するようになった。たとえば、メドアドヒアランス(MedAdherence)というダッシュボードで、患者が処方薬を処方どおりに服用してるかどうかを把握できるようにした。また、重要業績評価指標(key performance indicator=KPI)を毎日追跡して、データ主導の意思決定をくだせるようにした。

「分析というのは、見た目の良いダッシュボードを提供して何を購入すべきかを決めるだけでなく、どの活動に投資し、何を優先するかを決めるのに役立ち、組織の成長を支える」とハリソン氏は話す。

また、現場で使ってもらうためには、信頼を勝ち取る必要もある。「現場業務を技術がどれだけ改善するかを示さなければならない」と、同病院のデータ・サービス責任者クレイ・タウンゼンド氏は話した。

▽一人目の患者入院から数日でダッシュボードを構築して稼働開始

新型コロナウイルス感染症の患者らがパークランド病院(Parkland Hospital)に初めて入院したのは、2020年3月初めだった。「救命に必死になる最前線を支援するという非常に大きな責任を背負った」とスコット・ハリソン最高データ責任者は振り返る。

当初には、症例や検査キット、病床、個人用保護具(personal protective equipment=PPE)の情報提供が主に求められた。同氏によると、すでに200件以上の情報源が同社システムに接続されていたため、それらをまとめ、必要情報を即時更新してだれもが閲覧できるようにする一元的ダッシュボードをわずか数日以内に提供開始できた。

▽予想分析や感染地図、備品在庫追跡、人員管理、チャットボットをすぐに開発

予定されていたアプリケーション更新によってそのダッシュボードが数時間にわたって使えなくなったのは6月のことだった。それが現場に危機をもたらしたことを受けて、同病院はそのダッシュボード・システムを「非常に重要(ミッション・クリティカル)」なITシステムに指定した。

ハリソン氏とデジタル技術専門部隊にとっては、それが予想分析能力へと踏み込むきっかけになった。

同病院は結果的に、感染症例が発生している場所を地図上に示す機能をはじめ、人工呼吸器やPPEといった重要備品の在庫を追跡する機能、スタッフのウイルス検査と人員配置を管理する機能をすぐに開発した。

同氏らはさらに、感染症例の動向を予想する機能も実現した。地域住民からの質問に対応するチャットボット(人工知能基盤の質疑応答自動化ソフトウェア)も構築して実装し、問い合わせの通話件数も大幅に削減した。

▽三つの教訓

ハリソン氏は、これまでの経験から下記三つの教訓を共有した。

1)「技術負債」を減らしておく

同病院には旧式システムがいくつかあり、新システムへの移行計画があったが、パンデミックの発生時点では未完了だった。

「それらのシステムを中央プラットフォームに接続する作業が、われわれのデータ技術班にとって大変な負担になった」とハリソン氏は振り返る。この種の「技術負債」をできるだけ減らしておくことが重要だ、と同氏は考えている。

2)急速な変化に備えておく

「変化の速度がとにかく非常に速い」と、同病院のデータ・サービス責任者クレイ・タウンゼンド氏は語っている。コロナ禍が拡大するあいだ、ドライブスルー検査所や電話問い合わせ対応センターが次々と追加された。そのたびに既存のシステムにただちに接続する必要があった。そのため、あらゆる状況と急速な状況変化にすぐに対応できるよう、日ごろから準備しておくことの重要性があらためて浮き彫りになった。

3)戦略計画にデータを統合する

データの収集と分析が組織の戦略計画にとって不可欠であることを、今回のパンデミックが明らかにした。ハリソン氏は、データ統治を主題にした経営幹部会議を開始し、病院経営陣がそこに参加するようになった。

「パンデミック前には、病院の戦略計画がこれほどデータに依存していなかった」と同氏は述べた。有事即応における戦略的対策の意思決定と実行に際しデータの収集と分析、活用がきわめて重要であり、データなしでは戦略が成り立たないことがあらためて実証された。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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