インターネット通販で購入した商品の返品時に手数料を徴収する店が増えている。店側の思惑通り返品は減っているが、年末商戦に向けて通販の売り上げが下がる懸念もある。
■1/3が「客減った」
ウォールストリート・ジャーナルによると、小売店やモールの返品処理を請け負う物流会社ハッピー・リターンズの調査では、半数以上の企業が「この方法で過去3年間に倉庫に戻ってくる商品を減らせた」と答えたが、約3分の1は「オンラインで購入した商品の返品に手数料を請求するようになってから客が減った」と回答した。
調査会社ガートナーのアナリスト、トム・エンライト氏は、売り上げは増えるが返品の数も最高になる年末商戦期が近づくのに伴い、小売業者は手数料のせいで客を遠ざけてしまう恐れがあると指摘。「返品手数料の導入で消費者の購買意欲を高めることはできない。小売業者は客を失うだけ」とみている。業界は2022年「年末商戦で売れた商品の18%近くが返品される」と予想していた。
■パンデミックで状況変化
小売業者にとって返品は長年の懸案事項だが、これまでは業者の大半が余分な配送・物流コストの受け入れを拒まなかった。しかし、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で20年にeコマースの売り上げが急増し、宅配量が激増して利益を圧迫するようになったため、多くの小売店が追加料金の導入を始めた。
パンデミックの間、消費者は衣料品などを一度に複数のサイズや色で注文し、自宅で試着して気に入らなければ返品するようになった。データ分析のアプリス・リテイル(Appriss Retail)と全米小売業協会(NRF)の調査によると、オンラインで購入された商品の返品率は19年の9.6%から22年には約16.5%と大幅に上昇した。返品には、荷物の取り扱い、商品の状態評価、在庫再補充といった作業が伴い、余計な配送費、倉庫費、人件費がかかる、ガートナーによると、返品によって企業は利益率の50%を失う可能性があるという。
小売店は返品を減らすため、頻繁に返品される商品に関する消費者への警告、消費者が衣料品のサイズを確認できるオンライン・ツールの導入、購入した商品を返品しないと事前に同意した場合の割引など、さまざまな戦術を模索している。
■コスト回収は不十分
ネット通販最大手のアマゾン、ファストファッションのH&MやZARA(ザラ)などはすでに返品手数料の徴収を始めており、ハッピー・リターンズの調査では、過去1年以内に何らかの形で返品手数料を導入した小売業者は81%に上る。しかし、こうした手数料は比較的少額であることが多く、返品処理にかかるコストの全てを回収できていないと専門家は指摘する。アマゾンでは、UPSを使って返品する場合の手数料は1ドル。H&Mは郵便局を使った場合5.99ドルかかるが、優遇制度の会員は無料。ZARAは返品商品の郵送料を3.95ドルに設定している。
サプライチェーン(供給網)管理ソフトウェア開発ブルーヨンダーの最近の調査によると、消費者の59%が「返品手数料などの厳しい規則があったから購入をやめた」と答えている。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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