CNBCによると、カナダは2023年夏移行、米国で解雇された外国人技術労働者たちの駆け込み寺として機能し、多くの外国人技術者を取り込んでいる。
▽6000人以上のH-1Bビザ保有者がカナダに
カナダ政府は、2023年に入ってからことし10月の時点で、6000人以上のH-1Bビザ(米政府が外国人に発行する就労ビザ)保有者がカナダに長期滞在目的で入国したと発表した。
その動きは、高等技術を持つ外国人労働力が米国での解雇によって行き場を失った結果とみられる。
「高学歴外国人らは米雇用主の言いなりになっている」とカナダの元入国管理官アニー・ボードイン氏は話している。
▽非常に狭き門のH-1B制度
H-1B制度は、技術や医療、そのほか専門技能が必要な分野で必要とされる大卒以上かつ技能保有者に米国内での就職を許可するものだ。アマゾンやマイクロソフト、グーグル、メタ・プラットフォームス、アップルといった米技術大手らは毎年数千人単位の外国人技術者のH-1B取得をあと押ししている。
1990年に始まったH-1B制度は、それ以来、競争が激化するばかりだ。米国市民権および移民局は、2024年の分として75万8994件の申請を受け取った。そのうち最終抽選に選ばれたのは18万8400件だ。同ビザの発給枠は年間6万5000人が上限だ。修士号以上の学位取得外国人には2万人までの別枠がある。いずれによせ非常に狭き門だ。
▽米技術大手ら、業績見通し懸念から大量解雇
マイクロソフトのソフトウェア工学者として雇われたインド出身のハーノール・シン氏は、「非常にストレスフルだ」「くじに当たるまで3回かかった」と話す。
米技術業界ではことし初め、記録的インフレーションと歴史的金利引き上げによる景気と業績の見通し懸念から解雇の波が起こった。マイクロソフトは1月に1万人を解雇し、アマゾンは1万8000人を削減した。
解雇されたH-1Bビザ保有者らには、新たな就職先を見つけるか、ビザ・ステータスを変えるか、出国するか、国外退去処分に直面するまで最長60日の猶予が与えられる。
▽カナダ政府の試験的制度、開始翌日に定員に達する
カナダ政府はそこで、優秀な技術人材を確保する好機として、7月16日、最大1万人のH-1Bビザ保有者を対象に、カナダで3年間のオープン就労許可を申請する試験的制度を開始した。カナダの同制度はその翌日に定員に達した。10月までには6000人以上にカナダでの労働許可証が発行された。
マイクロソフトを解雇されたインド出身のシバストゥティ・コール氏は、カナダの同制度に飛びついた。「とにかく安心したかった」とコール氏は話した。
▽先進技術の開発国として台頭しつつあるカナダ
カナダの同制度は、技術人材拡充戦略の一環だ。カナダは、優秀な技術人材を世界中から引きつけるための複数年にわたる大規模計画を推進中だ。昨今では、人工知能技術の開発拠点としてモントリオールが世界有数の集積都市に成長しつつある。
商業不動産事業大手CBREの調査によると、カナダの技術市場は2020年以来15.7%成長し、11.4%成長した米国を上回った。 カナダには現在、110万人の技術労働者がおり、トロントとバンクーバーは北米の技術業界集積都市の上位10都市に番付けされる。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします
最近のニュース速報
-
2024年5月20日 アメリカ発ニュース, ハイテク情報, 米国ビジネス
人工知能が農業におよぼす大きな変革 〜 遺伝子情報を駆使した品種改良に貢献
-
米技術大手ら、メキシコでの製造拡大に注力 〜 台湾の技術製品メーカーらに熱心に働きかけ
-
2024年5月16日 アメリカ発ニュース, 環境ビジネス, 米国ビジネス
米国内都市圏の住宅所有者らは自然災害に要注意〜異常気象による損害危険の高い地域が明確に
-
2024年5月16日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
ドライバーの過半数が「AVは怖い」~AAA調査
-
2024年5月13日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
EVへの関心、ますます低下~消費者、メーカーの思惑に反し
-
インフルエンサーとブランドをつなぐプラットフォームで台頭 〜 ショップマイ、1850万ドルを調達
-
シンケイ・システムス、魚の活け締め技法を機械化 〜 完成に接近、鮮魚流通網に革新をもたらす可能性
-
ドキュサイン、インテリジェント契約管理サービスを発表 〜 電子署名ソリューション以外に事業を拡大
-
2024年4月29日 アメリカ発ニュース, ハイテク情報, 米国ビジネス
米商務省、TSMCのアリゾナ工場への投資を提案 〜 米中緊張悪化を背景にチップの国産化に重点
-
ディープフェイク、金融サービス業界をいよいよ標的に 〜 生成人工知能による音声模倣で詐欺急増は必至