宅配業者は、長年にわたってドライバーが最も効率良くコストのかからない道順で配達できるようなツールの開発に投資してきたが、特にアパートへの配達では、最終段階である部屋の特定が今も難しい。宅配業者や単発で配達を請け負うギグワーカーにとって、建物内でいかに速く届け先を見つけるかが大きな課題となっている。
◇大手は専用アプリで支援
ウォールストリート・ジャーナルによると、庭付き集合住宅、トレーラーパーク(可動式住居の停泊施設)、大学構内などは道が迷路のようで、部屋番号が順番に並んでいないこともあるため、配達に時間がかかる。集合住宅では正しい届け先を見つけるだけで30分かかることもあるという。
宅配大手は、配達員のこうした負担を軽減するためにいろいろと支援している。アマゾンの配送アプリは、ドライバーに役立つ情報を提供し、届け先が通りのどちら側にあるのか、集合住宅の建物の並びや部屋割り、大学キャンパスのような場所での配達物共同窓口などが分かるようになっている。フェデックスは、配達員が到着したと思っている場所が届け先から遠すぎる場合に警告を発する衛星利用測位システム(GPS)のソフトウェアを持っている。また、UPSのナビゲーション・プラットフォーム「Orion(オライオン)」は、通りからは見えない配達物の置き場所や搬入口などの情報をドライバーに提供している。
◇ギグワーカーの不満
しかし、配送ドライバーの大半を占めるギグワーカーは、ほとんどがそうした専門的な情報を持たない。通常は建物の入り口までしか案内できないグーグルマップのようなGPSサービスに頼らざるを得ず、あとは自分で探すしかない。
グーグル、アップル、ウェイズなどのナビゲーション・ツールは、GPSなどに基づいて配達員の位置を推定するため、建物の中や地下にいる場合は不正確なこともある。UPSのような配送会社のドライバーは、定期的に同じ場所に荷物を運ぶことが多いため、混雑の少ない時間帯や最も便利な駐車場所など配達を楽にする要領を心得ているが、フリーのドライバーは未知の住所やルートを移動しながら推測しなければならない。時には雪や草木、季節の飾り付けなどで見えなくなった住居番号にも対処しなければならず、時間やコストがかかるため集合住宅には配達しないというドライバーもいる。
◇建物内部の情報を提供
カリフォルニアの位置情報サービス会社ビーンズ・エーアイ(Beans.ai)は、配達ドライバーなどに建物内の地図を提供してこの問題を解決している。地図には最寄りの駐車場、車から配達先までの行き方、門扉を開ける暗証番号を含む詳細な情報が盛り込まれている。同社は、宅配サービス業者にアパートの部屋を見つけてもらえなかった経験を持つ創業者らによって2018年に設立された。現在、同社のデータベースには数十万件の建物内地図があり、ギグワーカーや配送会社のドライバーを含む約10万人が毎日このアプリを利用している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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