日本の年金収入に関する税務申告手続きについて ~年金受給時の源泉徴収と対応方法〜

米国を含め日本以外の国の居住者は毎年の確定申告の際、日本の公的年金(厚生年金、共済年金、基礎年金、企業年金など)の受給額についても原則居住国での収入(所得)として税務申告する必要があります。ところが日本の年金は海外居住者に支給される際、受給額が一定額を超えると超えた分に対し約20%が(日本の国税局に)源泉徴収されます。この一定額というのは60~65歳が年間60万円(月額5万円)、65歳以降は114万円(月額9万5000円)です※1

そうなると、日本と居住国両国での納税となり二重払いとなってしまいますが、一部の国々(2023年1月現在73カ国※2)については日本と租税条約を締結していて、年金の請求手続き時に書類を提出することで日本側の源泉徴収を回避することができます(受給額が一定額に達しない場合は下記2項を参照)。

1. 日本側の源泉徴収を回避するための提出書類

年金事務所(日本年金機構、共済組合など)に対し年金請求用の書類とは別に、下記書類を提出します。

①居住国と日本の「租税条約の届出書(様式9)」(2部)
このフォームは年金請求時に年金事務所で受け取ることもできますが、日本年金機構のHPからダウンロードすることもできます。※3

②付帯書類「特典条項に関する付表(様式17-米)」(米国居住者のみ)
米国居住者は①の書類と共に提出します。同じく年金事務所で受け取ることもダウンロードして取得することもできます。※4

③IRS(米国連邦税務署)発行の居住証明書「IRS Form-6166」※5 (米国居住者のみ)
居住証明書(Certificate of Residence)というと日本人であれば現地日本領事館発行の「在留証明書」または現地の公証人(Notary)による居住証明書の認証・発行が一般的ですが、この手続きにはIRS発行の居住証明書が必要となります。Form-6166という様式番号が付けられていますが、この証明書を請求するためには(納税者)本人が「IRS Form-8802」※6というフォームに必要事項を記入し、所定のIRSオフィスへ郵送する必要があります。またこの時の発行料金は85ドルで、発送後Form-6166が送付されるまで時間もかかり(最近では3〜6カ月程度かかります)請求手続きとしてはやや面倒なものになります。いずれもIRSのウェブサイトよりダウンロードできます。

<年金請求手続き後>
年金を請求すると生涯にわたって受給することができますが、海外居住者は生存確認として「現況届」および「日本領事館発行の在留証明書」または「Notary発行の居住証明書」を毎年提出します。さらに上記①(米国居住者は①~③)の書類については3年ごとに提出する必要があります。提出しないと翌年から源泉徴収されます。※7

2. 受給額が一定額に達しない場合の提出書類

年金受給額が一定額より少なければ、国税局による源泉徴収はないので上記の書類は提出不要ですが、代わりに年金事務所に対し「租税条約に関する申立書」を提出します。このフォームは、受給額が一定額に達していないので上記書類を提出しない旨を申し立てるもので、住所、氏名等を記入する簡単なものです。フォームは年金事務所に備えてあるだけでオンラインでのダウンロードはできませんが、年金請求時に窓口で渡されて書き込むだけなので事前に用意する必要はありません。

なお、受給額が一定額を超えないにもかかわらず年金事務所から上記①~③の書類を提出するよう言われるケースがありますが、これは年金事務所の担当者の間違いの可能性が高いです。

そもそも年金加入者、受給者はほとんどが日本国内居住者であり、年金事務所の担当者といえども海外居住者の年金請求手続きを扱う機会が少ないため、十分な知識を持ち合わせていないケースが散見されます。そういうケースに当たった場合は「ねんきんダイヤル」※8に連絡して別の担当者に確認するか、または当社のような専門家に問い合わせて確認していただくようにしてください。

3. 源泉徴収されてしまった場合

(書類の準備がうまくできなかった場合など)租税条約の届出書の提出ができなかった場合には源泉徴収されてしまうことになりますが、租税条約締結国であれば、居住国でのその年の確定申告の際(申告書提出は翌年度)に日本の年金受給分についてすでに日本側で納税済みであることを申告することで、全額または一部の免除を受けることができます。ただし適用税率が異なる場合もあり複雑なので、税理士または会計士などの専門家に依頼して申告することをおすすめします。

※1:日本国内居住者とは異なる金額です。
※2:条約締結国は下記国税局のHPで確認することができます。
https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/report/2003/japanese/tab/tab31.htm
※3:「租税条約の届出書(様式9)」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/kyotsu/kaigai.files/02.pdf
※4:「特典条項に関する付表(様式17-米)」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/kyotsu/kaigai.files/03.pdf
※5:Form-6166
https://www.irs.gov/individuals/international-taxpayers/form-6166-certification-of-us-tax-residency
※6:Form-8802
https://www.irs.gov/forms-pubs/about-form-8802
※7:年金請求後のこれら提出書類については、年金事務所から海外住所宛に案内レターが送付されます
※8:年金に関する問い合わせ先「日本年金機構ねんきんダイヤル」
https://www.nenkin.go.jp/section/tel/index.html

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、介護・葬儀・相続など日本在住の老親のサポート)を行う。

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