自動化農業が加速、収穫ロボットやドローン、人工知能が普及へ 〜 米国内農場の3分の2はデジタル・システムをすでに活用

マッキンゼーの2022年の調査によると、米国内の農場の約3分の2がデジタル・システムを使って農作業を管理しているが、ロボットや自動化に大規模に投資している農場の割り合いは15%、小規模農場ではその割り合いはわずか4%だ。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、自動化農業は近年に急速に広まっており、それらの割り合いは今後数年間で劇的に拡大する、とマッキンゼーの上席パートナーであるデイヴィッド・フィオッコ氏は予想する。

▽コストと無線通信が課題

ワシントン州で7500エイカーの農場を経営するアンドルー・ネルソン氏の小麦畑では、農機が無人で稼働している。米国の農場では近年、ほとんどの農機はGPSで誘導され、農場管理ソフトウェアといったデジタル技術で制御されている。最近では、人工知能によってさまざまの状況および状態を認識して農作業を最適化する各種の自動化または合理化ソリューション群も普及し始めた。

初期コストが高い場合や高速無線接続の不安定性といった課題はあるが、一部の農家では、末端電算を試験運用し、高速無線接続の不安定さに対応している。

自動化農場の専門家らによると、同市場では特に下記5つの分野でさらなる革新と市場拡大が加速すると見込まれる。

1)自動トラクター

人間の監督をほとんど必要とせずに、あるいは人間が遠隔操作することで、耕作から植え付け、収穫まで一連の農作業を自動化するトラクターはすでに実用化されており、近年、その普及が本格化している。

トラクター・メーカーらは近年に、自律稼働農機開発への投資を積極化させている。モナーク・トラクター(Monarch Tractor)では、完全電動トラクター「MK-V」をワイン農園に納品している。1回6時間の充電で最大14時間の作業が可能だ。

また、ファームワイズ(Farmwise)は、人工知能で制御する除草&耕作機を開発した。機械視認(コンピューター・ヴィジョン)で雑草を検出して日夜動作することで農薬使用量を減らす、と同社は説明している。

かたやディア(Deere & Co.)は斬新な取り組みを進めている。同社の場合、自動化技術の各層を複数段階に分けて追加できるプラットフォームを展開している。農家側が自動化に段階的に慣れるようするとともに、自動化による急激な人員削減につながらないようにしている。

ディアの大型散布機は、数千枚という雑草画像で機械学習し、大豆やトウモロコシ、綿花といった作物と雑草の違いを即時識別し、必要な場合のみ農薬を散布するため、農薬使用量を最大3分の2減らすことができる。

2)収穫ロボットとドローン

小麦やトウモロコシのように広大な畑で大規模に栽培される作物は、農作業の自動化がもっとも進んでいる分野だ。それに対し果樹園の場合、自動化が比較的困難だ。果実が高木や灌木になることが多く、また熟す時期が個々の果実によって異なるためだ。したがって、果樹園では労働集約型であり続けている。

コロラド州デンバーの新興企業トルトゥーガ(Tortuga)は、きずつきやすい果物の典型とも言えるイチゴやブドウの収穫ロボットを開発した。火星探索機に似た形状の同ロボットは、太いタイヤと長い機械腕を装備し、畝を自律移動してイチゴを一つずつ、あるいはブドウを1房ごとに切り取り、かごに入れていく。同社は3月、垂直農業を手がけるオイシイ(Oishii)に買収された。

イスラエル拠点のテヴェル・アエロボーティックス・テクノロジース(Tevel Aerobotics Technologies)は、剪定や収穫のできる「空飛ぶ自動ロボット」を開発し、人手不足への対応を支援している。「ロボティクスを取り入れない生産者らは、これから生き残れなくなるだろう」と、同社の設立者兼CEOであるヤニヴ・マオール氏は話している。同社の目下の課題は、技術コストを下げることだ。

3)画像分析と人工知能

人工知能で制御するドローンや人工衛星は、農業をデータ主導の産業へと変えつつある。詳細の人工衛星画像や検知器群からのデータを活かしてデジタル・ツインを構築することで、病害虫が広がりつつある部分や水分量が適切でない部分を正確に検出できる。農家はその結果、早期かつ精密に対応策を講じることができるようになり、無駄を削減しながら収穫量を増やせるようになる。

マイクロソフトで農業技術事業を率いるランヴィーア・チャンドラ氏は、「農場から人がいなくなることはあり得ないが、人工知能によって生産性が高まるだろう」「ドローンやトラクターが稼働するたびにデータを収集し、個々の農場独自の人工知能モデルを更新していく」と話した。

4)土壌分析

土壌の健全性を調べるにあたり、これまでの方法では生産者が土壌サンプルを研究所に送って分析していた。しかし、畑で土壌をスキャンしてその場で診断できる新しい技術が登場している。その種の診断には、微生物の状況や土の密度、根の伸び具合、気体交換の状況、そのほかさまざまの土壌の質や環境が含まれる。

カナダ拠点のソイルオプティクス(SoilOptix)は、微生物分析サービスを農家らに提供することで、灌漑や農薬を畑全体で調整するのではなく、必要な場所と適時を特定できるようにし、土壌の管理および維持を最適化するソリューションによって精密農業を支援している。

5)仮想柵

北米や欧州、オーストラリアの家畜牧場では、仮想柵(ヴァーチャル・フェンス)が大きなコスト削減効果をもたらす可能性がある。同技術は、GPSを搭載した首輪を家畜に付け、デジタル地図上で境界線を定義する。家畜が境界線に近付くと、まずは警告音を発し、それでも家畜が境界線に向かって進む場合には、微量の電気ショックをあたえるしくみだ。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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