保険業務人工知能、請求処理からリスク評価に移行 〜 保険引き受け業務での活用も拡大

保険業界はこれまで、保険金請求処理に人工知能技術を活用することで、その業務過程を合理化してきたが、現在では、保険金発生前のリスク評価と継続的な監視に軸足を移しつつある。

プログラム・ビジネス誌によると、損害保険業界の場合、人工知能基盤の機械視認(コンピューター・ヴィジョン)を使って損害写真を分析し、不正請求のパターン検出のほか、被保険者がモバイル・アプリケーションを通じて24時間いつでも事故報告できる通知と損害内容の評価を迅速化させてきた。

かたや医療保険の場合、2025年に実施された全米保険監督者協会の調査によると、医療保険会社93社のうち84%は、人工知能または機械学習を業務過程にすでに組み込んでいた。最大の用途は不正検出だった。また、請求処理自動化に大規模投資した保険会社では、完全自動処理率が約10~15%から70~90%に上昇した。

リスク評価の自動化は、保険契約時に一度だけ評価するのではなく、契約期間全体を通じてリスクを継続的に評価するしくみだ。自動車保険なら車両整備状態や運転行動の質、不動産保険なら建物の維持管理状況、医療保険なら事故または疾病の可能性に関する行動や習慣の変化や環境を人工知能が継続的に評価かつ検知する。

保険業界は現在、保険引き受けに際する業務でも人工知能の活用を積極化させている。人工知能代理人(AI agent)を活用した保険引き受けシステムでは、モノのインターネット(Internet of Things=IoT)検知器や人工衛星画像、テレマティクス、外部データベースからデータを取り込み、常時更新されるリスク・プロファイルを構築して維持する。

機械視認向け人工知能は、写真や動画を構造化データに変換し、商用車両群や施設建物の屋根といった多種多様の画像の分析内容をもとに保険引き受け判断を支援する報告書を生成する。予想分析では、過去の損失データと現在の状況を組み合わせることで、特定の用途において最大54%の保険引き受け精度向上が確認された。

人工知能はさらに、保険引き受けデータ入力精度を約75%から90%以上に高めた。複雑な保険契約の場合では、リスク評価の精度を43%改善し、引き受け判断に要する時間を31%短縮した。自動化された一部の過程では、処理時間が3日から3分に短縮されたと報告されている。

2022~2024年には、ありとあらゆるデータの分析内容にもとづく保険引き受け判断システムを導入した損保会社の総合損害率(combined ratio)が、同システムの導入に遅れた他社より約6ポイント低かったという調査結果も報告された。

ロンドン拠点の人工知能基盤分析会社エヴィデント(Evident)によると、欧州と北米の保険会社30社を対象に実施した調査では、人工知能技術導入事例が2025年第4四半期だけで28件報告された。その件数は前年同期比87%増を意味する。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

最近のニュース速報

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
STS Career

注目の記事

  1. 2026年6月1日

    AI時代の仕事術2026
    2026年、AIは「使う」から「任せる」へ 2020年以降、AIの進化は「生成能力...
  2. 植民地から合衆国建国へ 18世紀半ば、現在のアメリカ東海岸にはイギリスの支配下にある...
  3. 2025年12月1日

    就職&雇用ガイド2025
    監修 STS Career https://usfl.com/author/stscar...
  4. 2025年10月8日

    美しく生きる
    菊の花 ノートルダム清心学園元理事長である渡辺和子さんの言葉に、「どんな場所でも、美しく生...
  5. 2025年10月6日

    Japanese Sake
    日本の「伝統的酒造り」とは 2024年12月、ユネスコ政府間委員会第19回会合で、日...
  6. アメリカの医療・保険制度 アメリカの医療・保険制度は日本と大きく異なり、制度...
  7. 2025年6月4日

    ユーチューバー
    飛行機から見下ろしたテムズ川 誰でもギルティプレジャーがあるだろう。何か難しいこと、面倒なこ...
  8.        ジャズとグルメの町 ニューオーリンズ ルイジアナ州 ...
ページ上部へ戻る