新型タンク車も安全性不十分〜原油の鉄道輸送
- 2015年3月19日
- 米国ビジネス
北米で原油輸送中の鉄道事故が増えたことを受け、より頑丈なタンク車が使われ始めたが、それでも脱線時の衝撃には耐えられないことが最近の事故で明らかになっている。
ウォールストリート・ジャーナルによると、最新のタンク車は「CPC-1232」と呼ばれる形式で、2011年に導入された業界の新基準に基づいて開発され、タンク部分のシェル(外殻)がより厚く圧力解放装置も付いており、米国とカナダで毎日数十万バレルの原油を運んでいる。しかし、2月にウェストバージニア、イリノイ、カナダのオンタリオ各州で発生した4件の脱線事故では、川への原油流出や爆発炎上を防ぐことができなかった。
直近の例では、アルバータ州産の原油を積んだカナディアン・ナショナル鉄道の列車がオンタリオ州ゴゴマ近くで脱線、94車両のうち5両は川に落ち、30両は炎上して翌日まで消火活動が続けられた。事故2件が相次いだ同州北部選出のクロード・グラベル議員は「新しいタンク車はより安全のはずだが、明らかに安全は十分ではない」と指摘した。
エネルギー業界は、ノースダコタ州のバッケン・シェールなどにおける原油輸送需要の増加を受け、迅速で安い輸送手段として08年から鉄道を使い始め、タンク車を頑丈にすることが安全性向上の主要課題になった。原油の鉄道輸送量は、09年の1日約2万1200バレルから14年末には104万バレルに増えたが、13年にはケベック州ラックメガンティックで47人の死者を出す脱線事故が発生。安全性について一段と厳格な対応が必要になった。
現在は速度制限が導入され、15年4月にノースダコタで施行される新規制では同州から輸送される原油には可燃性を抑える処理を施すことが義務づけられる。
北米では現在、約6万両のCPC-1232型タンク車とともに約10万両の旧式車が原油輸送に使われており、米運輸省は14年、タンク車の安全性向上策として3つの選択肢を提案した。ホワイトハウスは現在どれを選ぶか検討中で、この5月には勧告が出される見込みだ。
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