飲食店で印刷メニューが復活~QRコード不評で

レストラン業界では近年、接客係を増やさずにサービスを迅速化できる方法として客が携帯電話で注文するQRコード式メニューが導入されてきたが、最近はこの方式への不満が高まっている。

◇年齢で反応に違い

ウォールストリート・ジャーナルによると、不満は、注文品が確認しづらい、プライバシーが心配、テクノロジーが苦手、レストランの高級感を損なうなどさまざまで、スマホでQRコードをなぞるのは余計な作業をさせられているようで不愉快と感じる人もいる。このため、テーブルがある飲食店の多くはQRコードをやめて、紙のメニューに戻り始めている。

ただし、メニューの詳細な説明、特別イベント用のメニュー、会計方法など、QRコードで得られる補足情報が役立っている場合は提供を続ける場合がある。QRコードの受け止め方は世代間で分かれるため、若い客が多い店は使い続けているところもある。QRコード式の最大の問題は、客に携帯電話が必要と説明しなければならないことで、客の年齢層が高い場合、戸惑う客には専用のタブレット端末を使わせる店もある。

◇客単価が下がることも

シアトルを拠点に12店舗を展開するイエス・パレード・レストラン・グループによると、スマホ専用メニューはメニューの入れ替えや価格の調整が簡単だが、客、傘下各店のオーナー、従業員から不満が出ているという。例えば、シェフが運営するレストランでQRコード式メニューを使ったところ、メニュー全体に目を通さない客が増え、平均客単価が10%下がり、その結果接客係が受け取るチップも減った。このため一部の店では、ディナーでは印刷メニューを出し、ランチでは最初にカウンターで注文してもらい、追加注文はテーブルでQRコードを使うといったハイブリッド手法を採っている。

サンフランシスコの「フラワーアンドウォーター」の場合、印刷されたワインメニューにQRコードを追加して、ワインの情報をもっと詳しく知りたい人は責任者の試飲メモを読んだり、産地の地図や生産者の詳細を見たりできるようにしており、その結果ワインを注文する人が毎月約100人いるという。

◇88%が「印刷版がいい」

市場調査テクノミックが1月に実施した調査では、回答者の半数が「QRコードに引かれて来店することはない」と答えた。2022年の調査では、テーブルがあるレストランで食事をする場合、88%の消費者がQRよりも紙のメニューを好むことも分かっている。

QRコードを使った注文は、若い消費者でも苦労することがある。ニューヨークの「ジョン・フレイジャー・レストランツ」では、高級店では完全に印刷メニューに切り替え、テイクアウトや配達中心のカジュアル店舗ではQRコードを使って注文を迅速化している。

ニューヨークとニュージャージーで3店営業する日本食レストラン「ナミ・ノリ」は、数年前にQRコードを導入したが、「テーブルにメニューを置いておけばいつでも情報が見られ、QR式と同じような体験ができる」との理由から印刷メニューを復活させたという。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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