医療記録を読み取って解析する人工知能を開発するデジタル・アウル(Digital Owl)は、医療保険の審査や請求の処理過程を大幅に簡便化する人工知能ソリューションを開発してことで台頭しつつある。
同分野では、担当者らがそれぞれの案件ごとに数百ページに上る文書を読んで分析する必要がある。現在でもほとんどが手作業で行われており、保険業界は年間30億ドル相当の労働力をそれに費やしている。
ベンチャービート誌によると、その課題を一気に解消すべくデジタル・アウルを2018年に立ち上げたユヴァル・マン氏とアミット・マン氏の兄弟は、家族との夕食時の会話から起業案が生まれた、と話す。ユヴァル氏は弁護士、アミット氏は人工知能の専門家だ。
「その週の出来事を話していて、私が医療損害訴訟のために数百ページもの文書を分析していると話したところ、アミットがそれをいまどき手作業でやっているなんて信じられないと言った」とユヴァル氏は話した。「スキルと判断力と専門知識が求められる作業であって機械には不可能だと即座に否定したが、あくる日曜日にオフィスに出社して同じ作業をしながら、アミットの言うことが正しいと思った。その翌日に会社を設立した」。
デジタル・アウルの技術は、数十万ページ分の電子的な医療記録から抽出した情報を自然言語処理で解析できるようにする。データを時系列に並べて提示し、日時や身体の部位、症状といった各種の基準や要素によって絞り込める。
アライド・マーケット・リサーチ(Allied Market Research)によると、医療用途のビッグ・データ分析技術の世界市場は、2017年の168億ドルから2025年までには678億ドルに成長すると見込まれる。また、ビッグ・データ分析技術を導入する医療機関は、数年以内に年間コストを25%以上削減できると予想される。診断や疾病予想が向上する結果、再入院といった複数の要因が改善し、コスト削減につながる可能性があるためだ。
デジタル・アウルが開発した人工知能システムの有効性と保険業界という市場規模の大きさから、複数のエンジェル投資家らはデジタル・アウルの可能性に期待を寄せている。同社は2月8日にシード・ラウンド(資金調達)で総額650万ドルを調達したことを明らかにした。
「デジタル・アウルは、高度の自然言語処理を活用して、保険会社の抱える重大なニーズに応える独自のエンジンを開発した」と、同社に投資したアイベックス(Ibex)のニコール・プリール業務執行取締役は述べた。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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