地球温暖化対策で火力発電所などから回収された二酸化炭素(CO2)は現在、大部分が石油生産に使われているが、最近はそのほかにもさまざまな新しい用途が開発されている。
■酒や香水
ウォールストリート・ジャーナルによると、ニューヨーク市ブルックリンの新興企業エア・カンパニー(Air Company)は、光合成と関連する技術を使ってCO2由来の製品からアルコールを蒸留したウォッカを作っている。同社の「エアウォッカ(Air Vodka)」は、750ミリリットル入り瓶の小売価格が約65ドル。
同社は、ウォッカ1リットルの生産で大気から1ポンドのCO2が除去されると推定しており、同様の技術で手の除菌剤も作っているほか、今春からは香水を製造する予定だ。
■環境に優しいポリエステル
イリノイ州のバイオテクノロジー企業ランザテック(LanzaTech)は、アパレル業界向けに、製鉄所で回収した一酸化炭素(CO)を加熱してCO2にし、さらに発酵でエタノールに変え、ポリエステルの材料にする技術を開発した。ファッションブランドのZara(ザラ)が2021年12月に発売したパーティードレスのポリエステル生地は、20%がランザテックのエタノールでできている。同社はヨガウェアで知られるルルレモンとも協力しており、CO2由来のポリエステルは近く同ブランドの服に使われる。
■食品
CO2、水素、微生物を利用して魚のえさや代替肉向けの代替タンパク質を開発するカリフォルニアの新興企業ノボニュートリエンツ(NovoNutrients)は、09年以来ベンチャーキャピタルから累計1260万ドルの資金を調達している。同社は、代替タンパク質を食品や飼料メーカーに原料として販売することを目指し、業界大手にサンプルを送っている。
■家庭用洗剤
高分子材料を製造するドイツの化学大手コベストロ(Covestro)は、CO2を家庭用洗剤や洗浄剤の原料に使う研究に取り組んでいる。同社は19年以来、洗剤に含まれる殺菌成分で通常は石油または天然ガスから作られる酸化エチレンガス(EO)の最大25%を回収CO2に置き換える技術を開発しており、24~25年ごろにはこの技術を使って作られた洗剤が家庭で使われるようになる可能性がある。
■代替ジェット燃料
サンフランシスコ拠点のトウェルブ(Twelve)は、大気中のCO2をジェット燃料の製造に必要な成分に変換できるスーツケース大のリアクター(反応装置)を開発した。最近は合成燃料会社エマージング・フューエルズ・テクノロジーと協力して、CO2由来の代替燃料の製造、実験を行なっている。
共同創設者のニコラス・フランダースCO2によると、リアクターが生産できる燃料は1日10トンに達しないが、複数を組み合わせることで量を増やせる。大量生産のためにはほかにも再生可能エネルギーや十分な電力が必要といった条件があるが、同社は23年中に北米の工場でリアクター製造を開始する予定だ。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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