メタヴァース(metaverse)の商業向け応用機会の可能性が頻繁に報じられているが、業務応用での進歩という点において、米陸軍より進んでいる会社や団体、組織はない。
メタヴァース(metaverse)とは、インターネット上に構築された三次元の仮想空間で、複数の利用者らがそれぞれの分身(アヴァター)を使って自由に行動できる仮想社会の世界。
ベンチャービート誌によると、米陸軍は、合成訓練環境(Synthetic TrainingEnvironment=STE)の開発を2017年から進めている。STEは、すべての従来型仮想模擬化プログラムに取って代わる仮想訓練システムと位置づけられる。陸軍は、従来とは異なるシステム群を統合し、連合軍や合同訓練のための接続された単一システムの構築を目指している。
STEは、たとえば、地球の1対1のデジタル・ツインをクラウド・アーキテクチャー上でホストし、接続された仮想模擬化に高忠実度(フォトリアリスティック)の地形データを逐次転送する。戦車模擬化の訓練兵の場合なら、接続された戦闘機模擬化の操縦士が模擬体験する同じ木や茂み、建物を見ることができ、それによって統合兵器の運用が容易になる。
また、クラウド電算システムの拡張性によって、従来のサーバーでは対応できなかった人口密度や地形の複雑さといった本質的詳細状況をより現実的に表現できる。
STEが目指すのは、利用可能の複数データ源からデータを自動的に取得し、人工知能基盤の車両や歩行者といった何百万もの模擬化対象を一度にレンダリング(抽象的なデータ集合体をもとに、一定の処理や演算を実行して映像や音声、そのほかさまざまの要素を生成)することだ。
軍事用メタヴァースは、少数の開発会社または営利団体に支配されない大規模かつオープン・ソースのデジタル世界の縮図となる可能性がある。そのため、小売や娯楽といった商業向け応用とは対象的な開発過程をたどっている。STEは2030年までに日常的軍事訓練に実用化されるとみられる。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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