「リヴェンジ・スタートアップ」が増加 ~ 技術会社を解雇された人材ら、再就職より起業を選ぶ

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、最近の大量解雇で失職した技術人材の多くが、再就職ではなく起業を選んでいる。一方で、ベンチャー・キャピタル(VC)投資は下火になりつつあり、起業家らにとっては厳しい再出発の事業環境になっている。

▽米技術業界の解雇数、2022年初頭以来33万人以上に

従業員削減に関する調査およびデータ会社レイオフス・ドット・エフワイアイ(Layoffs.fyi)は、2022年初め以来、技術会社らが解雇した従業員数が計33万人以上に上り、2023年だけで16万8000人に達したと報告している。

失職者のなかでも起業家精神のある人は、自分で会社を立ち上げるリスクをとっている。過去何年にもわたってIT大手で高給を稼いできたため金銭的な安定性があるうえ、高度の職能を有していることから、リスクをとれる立場にあると言える。

そういった起業は「リヴェンジ・スタートアップ(Revenge Startup)」(復讐起業)と呼ばれることもある。

▽解雇によって、起業しない「言い訳がなくなった」

メイダ・ヘルス(Maida Health)を共同設立したジェン・ズー氏は、解雇を受けて起業を選んだ一人だ。カーボン・ヘルス・テクノロジース(Carbon HealthTechnologies)でプログラム開発の管理責任者を務めていたが、2022年に人員削減の対象となった。

ズー氏は解雇について、「ホッとした」と話している。起業の野心を以前から持ち続けていたが、それを実行しない「言い訳がなくなった」と感じたためだ。

メイダ・ヘルスは医療機関向けのソフトウェアを提供している。これまでにデイ・ワン・ベンチャース(Day One Ventures)から10万ドルの投資を獲得した。同氏は、早期段階から売り上げを計上することを目指している。

▽VC投資環境は過去数年間の最低水準に

ただ、昨今、資金調達は容易ではなくなっている。特に初期段階の新興企業に対するVC投資は、過去数年間で最低水準を推移している。

ピッチブック=NVCAベンチャー・モニター(PitchBook-NVCA Venture Monitor)によると、2022年第4四半期の米国におけるシード段階の投資額は計31億ドルで、前年同期比40%減となった。シード投資件数は829件で、前年同期比50%減。2016年以来、最低の四半期となった。

しかも、シリコン・バレー銀行が3月に破綻したのち、ベンチャー・キャピタリストの多くが投資をめぐる協議を停止しなければならなかった。暫定データでは、2023年第1四半期には投資額と投資件数がさらに下がっている。

▽奨励するも懐疑的姿勢のVC業界

ベンチャー・キャピタル会社らは、定職がなくなって時間ができたからという理由でそれまで温めてきた起業案や事業案を試そうとする起業家に対しやや懐疑的だ。

初期段階の新興企業に投資しているFPVキャピタル(FPV Capital)の共同設立者ウェスリー・チャン氏は、人員削減に遭って旗揚げした起業家から事業案受けているという。「アイデアを追求し続けるよう奨励するが、投資する可能性は低い」と同氏は話す。

「大きなリターンをもたらす起業家というのは、生涯ずっとそのアイデアを考えている人だ」と同氏は指摘し、失職を機に起業する起業家の真剣度や事業案の成熟度に疑問が残るという見方を示した。

▽不況が革新の好機になるという見方も

一方で、景気が減速するときにこそ偉大な新規事業が生まれる可能性があると考える投資家もいる。再創生や再発明を信じるシリコン・バレーの文化と言えるかもしれない。

エンジェル投資家のジェイソン・カラカニス氏は、アルファベットが6%の人員削減を発表した1月のある日、解雇された従業員らが団結して起業すべきだとソーシャル・メディアで呼びかけた。

「いまこそそのときだ。何も失うものはないし、巨額の退職金をリヴェンジ・スタートアップの資金にすればいい!」と書いたそのメッセージは約120万人に読まれた。

▽起業家発掘を制度化したデイ・ワン・ベンチャース

ズー氏が立ち上げたメイダ・ヘルスに投資したデイ・ワン・ベンチャースでは、技術会社らの元従業員たちが立ち上げた新興企業を以前から積極的に探してきたが、昨秋、「ファンディッド・ノット・ファイヤード(Funded, not Fired)」を立ち上げて、そうした起業家探しを制度化した。

メイダ・ヘルスは1200社の応募企業から選ばれた1社で、計7社が各10万ドルの投資を受けた。そのうちの1社の設立者は、自営業が難しすぎると感じ、従業員に戻ったという。

デイ・ワン・ベンチャースの設立者マーシャ・ブシェー氏は、今回の経験を受けて、最近の起業家たちの波に少し懐疑的になったと話している。「起業家たちがリスクや欠点を見つけることに以前よりも集中するようになった」とブシェー氏は話している。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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