ロボット業界団体A3(Association for Advancing Automation=先進自動化協会)が発表した2023年の北米ロボット受注数は、前年比30%減の3万1159台だった。06年以来最大の落ち込みで、減少は6年ぶり。景気の減速や金利上昇への懸念などから、企業にとって先進的な機械の購入を正当化することが難しくなったとみられる。
◇景気の先行きを懸念
ロイターによると、分野別では、北米ロボット市場の約半分を占める自動車関連産業のほか、食品製造、金属製造などで受注が落ち込んだ。同時に発表された23年10~12月の受注台数は、前年同期比8%減の7683台だった。
一部の企業はより高度なロボットの開発などを発表しているが、既存のタイプを販売する多くのロボットメーカーでは、景気の軟化に対する懸念や新型コロナウイルス禍で積み上がった過剰在庫が販売の足かせになっている。23年売上高が前年比7%減の3億400万ドルだったデンマークの小型ロボットメーカー、ユニバーサル・ロボット(Universal Robots)のキム・ポールソン社長は「23年は上半期の世界的な産業活動の鈍化で、多くの主要顧客にとって厳しい経済および事業環境になった」と振り返る。
◇過剰在庫の影響
新型コロナの大流行(パンデミック)期には、極端な労働力不足の中で各種メーカーは機械を使って商品を生産しようと躍起になったため、ロボットの売れ行きが伸び、A3によると22年は過去最高の受注を記録した。顧客に合わせてロボット・システムを設計し、組み立てるインテグレーターのCIMシステムズ(CIM Systems、インディアナ州)の場合、23年は堅調な滑り出しだったが、次第に業績が落ち込んだ。デイブ・フォックス社長は、同年の販売量は前年比で30%減少したと推定しており「いくつかの大きなプロジェクトが24年にずれ込んだ。一部の顧客は景気の先行きを懸念していたし、金利の影響もあっただろう」と話す。
ただ、A3のジェフ・バーンスタイン会長は「業界はパンデミックによる発注の歪みをほぼ乗り越えた」といい、ロボットメーカーのほとんどは楽観的で、24年後半にはビジネスが回復すると見込んでいるという。
パンデミックの期間中は、生産の遅れや世界的なサプライチェーン(供給網)の混乱の中で製造業者らは注文したロボットを受け取れるか不安になり、多くの企業がロボットを追加発注した。バーンスタイン氏によると、このため企業の多くが「必要な物を(22年に)前もって購入した」という感覚を引きずっており、ロボットをまた大量発注する前に在庫を消化する必要があると考えている。
オハイオ州のシステムインテグレーター、ワシオン・マシン(WauseonMachine)のジョー・ジェンマ最高収益責任者(CRO)は、過剰在庫がビジネスに影響を与えていることを認める一方で、国内では人手不足が続いているため、ロボットビジネスは今後も繁栄が続くと予想する。「最近訪問したある工場は、通常600人が生産に関わっているが140人分の空きがあった。私たちが訪れる場所のほぼすべてで労働力不足は続いている」
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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