医師が遠隔操作で患者の傷を監視でき、傷跡が残りにくく、光や電気で治りを早めることができる新世代ばんそうこう「スマート・バンデージ」の開発が進行している。
◇傷の治りを検知
ウォールストリート・ジャーナルによると、スマート・バンデージは急成長するウェアラブル(装着型)技術の一つで、より高度なマイクロシステムや柔軟なエレクトロニクスを活用する。
国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)も、2019年に発表した傷の治りを助けるバイオエレクトロニクス開発のための資金(5500万ドル)で開発を後押ししており、今や医療品の展示会場はスマート・バンデージの試作品であふれている。
プロトタイプの多くは、傷の治り具合を検知し、その情報を医師に無線送信できる小型電子機器を搭載しており、医師が遠隔操作で治療を施せるものもある。単純な切り傷やすり傷ならこれほど高度な技術は必要ないだろうが、病院での治療が必要なひどい傷や自宅で手当する慢性的な傷では、命を救う可能性がある。
新技術の多くは初期段階で、動物実験や人体実験中のものもあれば、まだ研究段階のものもある。
◇電子回路を搭載
スマート・バンデージの多くは、ばんそうこう自体のポケット部分に柔軟性のある電子回路が入っている。ペンシルべニア大学とラトガース大学の合同研究班は、炎症を検出して電気を流す電気療法によって治りを早められるバンデージを実験している。
過去の複数の研究で、電気的刺激によって免疫細胞の移動が促進され、殺菌や、傷口の死んだ細胞を除去できることが示されており、無作為臨床試験では、電気刺激が傷の治り方を改善することが示されている。
将来的には、携帯電話アプリを介してバンデージからリアルタイムで傷の信号を医師に伝え、悪化したら警告し、小さなカプセルやハイドロゲル(水を多く含む高分子ゲル)などに入った抗生物質をバンデージから投与できるようになる見込みで、炎症が認められると医師が遠隔操作でバンデージ上の弁が開くようにし、傷口に軟膏を投与できるようになる可能性がある。理論的には、早期に抗生物質が投与され、傷口がすぐに治れば傷跡の原因になるコラーゲンの過剰生産を避けられる。
また、ノースウェスタン大学では、抗酸化作用と抗菌作用のある薬剤を塗布するタイプと、傷口の水分値を医師にワイヤレス送信するタイプの2種のバンデージを実験している。水気があれば傷が治ろうとしていることを示し、乾燥すると治りが進んでいることを示す。医師は、遠隔操作で電極をプログラムして電気治療を行い、新しい皮膚細胞と血管の成長を促すことができる。
このほか、英サウサンプトン大学の研究班は、微細なLED照明で深紫外線(UV-C)を照射し、傷口を殺菌するバンデージの開発に取り組んでいる。
◇アトピー治療にも有望
傷以外にもスマート・バンデージが応用できる可能性がある。サウサンプトン大は、皮膚の水分値を検出するセンサーを使って、ひび割れや乾燥を引き起こすアトピー性皮膚炎を監視するバンデージの研究も進めている。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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