人々が電気自動車(EV)に求めている走行音は、映画の空飛ぶ円盤で使われるような人工的な音よりもガソリン車に近い音であることが、ソニックブランディング会社リッスン(Listen、ニューヨーク州)と市場調査会社クラウドアーミー(CloudArmy、カナダ)の共同調査で明らかになった。
◇質感ある音
オートモーティブ・ニュースによると、回答者が最も好んだのは、風や水、ホワイトノイズ(さまざまな周波数の音が混ざった雑音)を連想させるタイプの音で、ガソリンエンジン車の「ビューン」という感じの通過音に似ていることが示された。リッスンのポール・アミタイ戦略責任者は「より質感のある音の方が『車の音』として感じられたようだ」と分析している。
一方、あまり好まれなかった音のタイプは、SFの映画やテレビ番組に出てきそうな高周波に調整したハミング音だった。
調査は米国の成人400人超を対象に行われ、うち半数はEV所有者またはEV購入を検討している人が占めた。目的は、ハミングで出せるような調性音(一つの音を中心とする合成音)と、ホワイトノイズのような雑多な音が混じった非調性音のどちらが歩行者への警告音として効果的で、好感が持たれるかを明らかにすることにある。
調査では、いずれも5種類の調性音と非調性音が使われ、非調性音が好感度、認知度とも高得点だったが、認知度では調性音がわずかに優勢だった。
◇不快にさせずに警告
EVの出現で、自動車メーカーは歩行者など道路利用者に注意を促すための合成音を作る必要に迫られ、サウンドデザインに新しい分野が生まれた。2018年、運輸省道路交通安全局(NHTSA)のEV警告音に関する決定により、20年9月から新車は時速18.6マイル以下の低速走行時に警告音を発することが義務付けられた。
車の警告音は、不快感を与えることなく車の接近を認知させるよう、聞こえやすさと好感度のバランスを取る必要がある。アミタイ氏によると、音は適切な音量と周波数で記憶されなければならず、人を疲れさせたりいらだたせたり、ストレスを感じさせたりすることなく、適度な緊張感を出さなければならない。
BMWでサウンドデザインを指揮するレンツォ・ビターレ氏の場合、車の音を作る時、まずその車の本質と特性を考えることから始まる。車の「声」や、人々がそれをどう受け止めるかを考えた上でサウンドデザインの作業に入るという。
ビターレ氏はひらめきを得るため、車以外の物にも目を向ける。木の葉を吹き抜ける風のような質感を加えられるか、その音は特定の感情を暗示するか、音を荒げたり不快にすることなく際立たせるようなハーモニーはないか…などと考えるという。「完ぺきな和音のように聞こえる必要はない。例えば教会の鐘は非常に複雑な音の集まりだが、それでも不快ではない音だ」
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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