ラスベガスの公共交通機関、武器検出人工知能システムを導入 〜 自治体による大々的採用は国内初、凶悪犯罪即応能力を強化

ラスベガスは、地域の安全性を高めるために人工知能による監視システムを米国内で初めて大々的に実装する。CNBCによると、ネバダ州南部の自治体では、ゼロアイズの人工知能システムを採用し、銃を使った凶悪犯罪の被害最小限化を目指す方針だ。

▽銃検知ソフトウェア会社ゼロアイズのシステムを導入

南ネバダ地域交通委員会(Regional Transportation Commission of SouthernNevada=RTC)は、公共交通の安全性を強化するための複数年で3300万ドルの技術拡充策の一環として、銃検知ソフトウェア会社ゼロアイズ(ZeroEyes)の人工知能システムを導入する。

RTCの安全性&セキュリティー担当責任者トム・アッテベリー氏は、銃撃戦が展開される状況では数秒が重要であり、同システムを導入することで当局が優位に立てる可能性があると述べた。「銃器が振り回されているのを確認する時間ができるため、通報を受けて現場に急行し、人命を救うことができる可能性を高められる」。

▽画像分析から転送、確認、判断、通報まで3〜5秒

ゼロアイズのシステムは、導入現場の既存の警備用カメラに接続し、逐次転送動画内容を人工知能で即時分析する。同システムは1秒あたり数千枚の画像を処理し、画像に銃器が含まれていると思われる場合に同社の専門部署ZOC(ZeroEyes OperationsCenter)に即時通知される。

ZOCには、経験豊富な元警官らが常駐しており、検出された状況の脅威度を迅速に判断する。銃器の疑いのある画像をZOCの専門家たちが確認し、脅威があると判断した場合、同社のシステムは、当該施設管理者と警察に通知し、容疑者の人数と場所、武器の種類を伝える。それら一連の過程にかかる時間はわずか3〜5秒だ。

▽全米各地の交通機関で暴力事件が増加

米運輸省が2023年末に発表した報告書では、全米各地の交通機関関係者らが、交通機関における暴力の増加について懸念していることが詳述されている。運輸統計局が管理するデータベースによると、交通機関での暴行事件が急増しており、交通機関の安全性に対する市民の不安が高まっている。

ラスベガスの交通機関犯罪統計は、同等規模のほかの交通機関と比較すると少ないが、ラスベガスでは2017年にストリップ(大通り)沿いのマンダレイ・ベイ・リゾート・アンド・カジノの32階からスティーヴン・パドック容疑者(現場で自殺)が音楽祭会場向けに1049発を発砲し、58人が死亡、867人が負傷した銃乱射事件が起きて以来、公共の場での銃の問題への対応が重視されている。

▽もともとは学校向けを想定して開発

自治体の公共交通機関がゼロアイズの武器検知システムを大々的に導入するのは全米初だ。

同社の共同設立者サム・アライモ氏によると、銃乱射事件では一般に、多くの目撃者から寄せられる911(警察、消防、救急)通報内容のほぼすべてが矛盾する。そのため、人工知能によるリアルタイム検出とZOCによる脅威度判断が防止や早期解決に貢献する。

同システムはもともと学校を想定して設計されたが、政府機関や大企業キャンパス、カジノ、製造業の複合施設に商機があることから、アライモ氏は軸足を移した。

アッテベリー氏は同社のシステムについて、拳銃ホルスターに収められた合法銃を検出するためのものではなく、「威嚇的に銃を振り回す人物を特定するためのもの」と強調している。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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