EVの普及が鈍化する一方でハイブリッド車(HV)の販売が急増しているため、白金族系金属(PGM)の需要が予想外の伸びを見せている。
◇長期的には衰退も
ロイターによると、PGM(主にプラチナとパラジウム)は、自動車の排ガス浄化装置が主な用途であるため、長期的には構造的な需要の衰退に直面している。特に数年前はEVの販売が急増し、需要の急低下が予想されたため、PGMとその生産者の見通しは厳しいと思われた。しかし最近は、EV販売が伸び悩み、ガソリンエンジン部品として触媒コンバーターが必要なHVの需要が急増しているため、PGM価格が下げ止まり、一部の鉱山の操業期間が延びる可能性が生まれるなど息を吹き返している。
コンサルティング会社ロー・モーション(Rho Motion)によると、2024年上半期は完全EVの世界販売台数の伸びが前年同期比11%へと鈍化した一方、プラグインハイブリッド車(PHV)の販売は44%増加した。2年前はEV販売が77%と急増していた。現在、PGMは価格の低迷で生産への投資が抑制されており、採算性の低さから鉱山会社が操業停止に踏み切れば、価格が不安定になる可能性がある。
◇中国のPHVが貢献
HVの強い需要は30年またはそれ以降まで続く可能性があり、PGMが必要とされる期間は延びると見られている。PGMを専門とする触媒メーカーのジョンソン・マッセイでは23年、EV販売の低迷により横ばいになると予想されたガソリン車とHVの販売が合わせて前年比9%増加したため、自動車用PGMの需要が8%(60万オンス)増え、1310万オンスと過去2番目の高水準に達した。
最も大きく成長している分野は中国のPHV市場で、24年上期は販売が70%も増加した。アリックスパートナーズは、PHVの世界自動車販売に占めるシェアは2年前の5%から30年までには12%に拡大すると予測しており、同社が今年実施した調査では、世界の2大自動車市場である中国と米国では、EVを購入しようとしている消費者の80%以上が完全EVではなくPHVに傾いている。
HVの中でもPHVは、ガソリンエンジンの使用頻度が低いためコールドスタート(冷間始動、エンジンが冷えた状態で始動すること)が多い。冷間始動時は排気の汚染度が高くなるので、ガソリン車よりも排ガス浄化装置に約10~15%多くのプラチナが必要になる可能性がある。
貴金属コンサルティング会社メタルズ・フォーカスによると、触媒が必要な車が100万台増えるごとに、PGMの需要は約15万オンス増えるといわれている。
EV価格がすでにガソリン車水準に近い中国では、多くの消費者が航続距離の長いPHVを選んでおり、PHVではガソリンエンジンは電池の充電だけに使われ、より長い走行距離を提供している。
一方、HVへの販売シフトで、コバルトやニッケルといった主要なEV用電池材料の需要は抑制される見込みだ。HVの電池はEVより小さいためで、コンサルティング会社CRUによると、24年上期のPHVの加重平均電池容量は23.3キロワット時(kWh)、完全EVは64.5kWhだった。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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