固体電池の普及、従来のEV電池超える利点が必要

固体電池技術が電気自動車(EV)にとって最良の選択肢と考える人は多いが、そうなるには実績のある液体電解質のリチウムイオン電池よりも優れていることを明確に示す必要がある。

◇もっと優れた電池を

オートモーティブ・ニュースによると、フォルクスワーゲン(VW)グループが支援するEV用固体電池開発クアンタムスケープ(QuantumScape、カリフォルニア州)の技術者、アレックス・ルーリ氏はミシガン州で最近開催された電池技術の展示会バッテリーショーで「消費者は固体電池を熱望している訳ではない。皆が求めているのはもっと優秀な電池だ。固体電池を不可欠な製品にするため、技術を実証し、それを消費者の手に届けることが私たち全員の責任だ」と述べた。

固体電池技術によって、より安全かつ小型で、より高エネルギーの電池が実現し、自動車メーカーは低コストでより航続距離の長いEVを製造できるようになる可能性がある。しかし、各社はまだ固体電池をテストし、その生産規模拡大の方法を探している段階にある。それでも関連サプライヤーは、長期的にこうした技術がEVの航続距離と電池の安全性向上のカギを握ると見ている。

日産は、固体電池技術をEVの「ゲームチェンジャー」と位置付け、2028年度までにEVへの搭載を計画しているほか、ファクトリアル・エナジーは27年までに半固体電池を発売し、その後全固体電池を提供する予定だ。

◇コスト競争力も必要

一方、固体電池技術と同様に、現在大半のEVに搭載されている液体電解質のリチウムイオン電池も進化している。BMWグループの技術者、フレデリック・モーゲンシュテルン氏は「固体電池だけが解決策ではない。すでにリチウムイオンという技術がある」と語る。米環境保護局(EPA)の推定によると、現在市場で最も航続距離が長いEVは「ルシッド・エア」の最大512マイルで、23年の米国におけるEVの航続距離の中央値は270マイルだった。モーゲンシュテルン氏は「ほとんどの消費者は、自分のEVの走行距離と充電速度くらいしか知らず、電池の詳細はあまり意識していない。固体電池が従来のリチウムイオン電池より優れているなら、市場は存在するだろう。市場には常に異なるニーズがある。電解質が固体だからといって、電池が本質的に優れているわけではない。優位性を提供できなければならない」と指摘する。

既存の電池とのコスト面の優位性も必要で、ソリッドパワー(コロラド州)のジョシュ・ブエットナーギャレット最高技術責任者(CTO)は「サプライチェーン(供給網)のリスクは現実的だ。私たちは新しい素材を使い、場合によっては新しい工程で技術を開発しているが、遅かれ早かれ、コスト競争力を持たなければならない」という。

電池メーカーや自動車メーカーは、リチウムイオン電池を製造するギガファクトリー(大型工場)に合計数十億ドルを投資している。BMWのモーゲンシュテルン氏は「よほどの有利さがない限り、既存のシステムを固体電池向けの新システムに置き換えることはないだろう」と見ている。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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