中国のEVやHVメーカーはラテンアメリカなど欧米以外の地域で安い自動車を大量に販売し、欧米自動車大手の脅威となっている。
ウォールストリート・ジャーナルによると、主な標的となっているのは、約6億5000万人の人口を抱え、EVの電池に必要なリチウムの多くを生産しているラテンアメリカとカリブ海地域だ。
長城汽車はブラジルサンパウロ州イラセマポリスで旧メルセデス・ベンツの工場を引き継ぎ、32年までに18億ドルを投じて南米の拠点にする計画だ。
比亜迪(BYD)は23年、ブラジルのカマサリにある旧フォード工場を購入し、10億ドル近くを投じて改装している。12月に操業を開始し、25年に15万台、28年までに30万台を生産する予定で、そのうち約10%は南米の他地域への輸出を予定している。ブラジル(人口2億人超)は本国以外で最大の自動車市場で、1~9月に前年同期比8倍以上となる約5.1万台のBYD車が登録され、登録輸入車の約72%を占めた。新車販売の約10%を中国ブランドが占めるメキシコにも工場建設を検討しており、コロンビアやチリでも電動バスの販売を急速に拡大している。
◇大きな恩恵に期待
地元には、中国への依存を警戒する声もある。ブラジルでは09年に中国が米国を抜いて最大貿易相手国となって以来、安価な輸入品が大量に流入して産業空洞化が加速しており、GDP(国内総生産)に占める製造業の比率は1985年の36%から23年はわずか11%にまで縮小した。
政府関係者は、今は工場を建設する労働力の一部が中国人であってもブラジルはその恩恵を受けられると期待している。カマサリが位置する北東部バイーア州の雇用担当政務次官は、BYDの工場がこの地域に正規・非正規合わせて約1万5000人の雇用を生み出すと見込んでおり、21年のフォード撤退によって失われた9000人をはるかに上回る。長城汽車が購入したイラセマポリス工場は、メルセデスの業務閉鎖時には約370人が職を失った。
◇存亡にかかわる脅威
一方、欧米の伝統的自動車メーカーは中国車に追いつくのに苦戦している。フォードのジム・ファーリーCEOは中国メーカーは「存亡にかかわる脅威」だと語り、今年初めには、南米とアフリカを「フォードの明暗を分ける市場」とその重要性に触れている。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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