使われなくなったオンライン・アカウントが、個人情報漏えいの危険性を高めているとみられる。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、個人や勤め人らが過去に開設したのち使わなくなった各種のオンライン・アカウントは、当該アカウント自体に重要情報が登録されていなくても個人情報漏洩の原因になる。本稿では、その実態を前編と後編に分けて解説する。
▽一人あたり平均168件のアカウント
同じ利用者名や認証語を使い回している場合、その危険性は特に高まる。たとえば、古いペットの写真群を共有サイトにアップロードしただけでも、そのログイン情報が銀行口座といった重要性の高いウェブサイトに悪用される可能性がある。
マサチューセッツ工科大学が2021年に発行した調査報告書によると、盗まれた利用者名がダーク・ウェブで30億件以上販売されており、その多くでは認証語と一緒に売り出されている。
持っているオンライン・アカウントが多ければ多いほど、そういった脅威に対する危険性は高まる。認証語管理技術を提供するノードパス(NordPass)が2024年に実施した調査では、平均的なインターネット利用者が持っているアカウント数は168件という結果が報告された。
▽本人すら忘れている場合も
使われなくなったアカウントを閉鎖または削除することは、セキュリティー上の理由からきわめて重要だ。
「10代のころに試してみたSNSのように、自分にとって価値のないデータが多い古いアカウントを使わずに持っているだけの人は非常に多い」と、コンスーマー・リポーツ・イノヴェーション・ラブ(Consumer Reports Innovation Lab)の製品研究開発責任者ジニー・ファース氏は指摘する。
むかしに一度だけ使ったようなアカウントは、開設した本人すら忘れていることも多い。それを見つけるには、ブラウザーやアプリケーション、電子メールの受信トレイを使って発見する必要がある。
そのほか、プライバシー関連法が整備されるにつれ、アカウント削除要請過程を簡便化する動きが強まりつつある。また、ファー氏の班が開発したツールのような支援技術も登場している。
▽使わなくなったオンライン・アカウントの三つの削除方法
1)保存されたログイン情報を見つける
オンライン・アカウントのログイン情報は、ウェブ・ブラウザーやオペレーティング・システム(OS)、認証語管理アプリケーションに保存されていることが多い。
たとえば、デスクトップ・パソコンでクロームを使っている場合、同ブラウザー右上の三つの点をクリックして、「パスワードと自動入力」メニューに進み、「グーグル・パスワード・マネージャー」に進むことで、ブラウザーに保存されているアカウントを見ることができる。ほかのブラウザーでも同様の機能が提供されている。
また、端末に搭載されたOSの設定機能の一部として提供されている認証語保存機能も確認すべきだ。アンドロイドでもiOSでも、「設定」メニューから認証語管理機能にアクセスできる。
さらに、ワンパスワード(1Password)やビットワーデン(Bitwarden)、ダッシュレーン(Dashlane)といった認証語管理アプリケーションを使っている場合、そこに保存されたアカウントも確認する必要がある。
2)アプリケーションやウェブ・サービスを確認する
アプリケーションやウェブ・サービスを確認することで、忘れていたアカウントをさらに見つけられる可能性がある。たとえば、グーグルとの情報共有を以前に承認していたエクスペディア(Expedia)のアカウントが見つかるかもしれない。フェイスブックとの情報共有を承認したピンタレスト(Pinterest)やトゥウィッチ(Twitch)のアカウントが見つかることもある。
その種のアカウントを見つけるには、グーグル・サービスの場合、「グーグル・アカウントの管理」から「セキュリティー」に進む。フェイスブックでは、プロファイル写真をクリックして「設定」に進むことで、第三者のアプリケーションやサービスの管理メニューにアクセスできる。
そこでもやはり、アンドロイドとiOSでモバイル・アプリケーションに関連づけられたアカウントを確認するとよい。
最後に、電子メールを確認して、サービスに登録した際の確認メッセージを見つけることができる。それに際しては、英語の電子メールであれば「welcome」「free tria l」「unsubscribe」「changes to」「privacy policy」「log in」「login」「updat e」「your account」「sign in」「sign-in」「verify」といったキーワードが有効だ。
3)アカウント削除支援ツールもある
古いアカウントを見つけたら削除へと進む。
会社やサービスによっては、アカウントを無効化するとデータ削除過程が開始されることもある。開始されない場合は、サイトから個人情報を削除するための選択肢を見つける。フェイスブックといった第三者サービスとのリンクを解除したり、スマートフォンからアプリケーションを削除したりすることも重要だ。
コンスーマー・リポーツ誌が2022年に公開した無料のモバイル・アプリケーション「パーミッション・スリップ(Permission Slip)」は、アカウントの削除作業を支援する。パーミッション・スリップには、アンドロイド版とiOS版がある。現在、350近いサイトのアカウント削除機能にリンクが貼られており、そのうち約半数にリクエストを自動送信することができる。
ファース氏によると、コンスーマー・リポーツは2024年末までに対象サイトの件数を大幅に増加させる計画だ。
パーミッション・スリップを使うにはアカウントを作成する必要がある。コンスーマー・リポーツによると、その際に入力される個人データを広告に使うことはないが、自社の商品やサービスの販促目的に使われることはある。パーミッション・スリップでアカウントの削除機能を使ったあとに、パーミッション・スリップのアカウントを削除することはできる。
削除したいアカウントがパーミッション・スリップに含まれていない場合は、当該会社のウェブサイトに直接アクセスして、プライバシー・ポリシーを見てみるとよい。アカウントを削除する方法についての説明が掲載されている可能性がある。また、ホームページの最下部にそのためのリンクがあることもある。英語のサイトであれば「close account」や「delete account」のキーワードで検索するのが有効だ。
削除したいアカウントに古い写真やメッセージといった自分にとって貴重な情報が保存されているのであれば、アカウント削除の前にダウンロードすることもできる。グーグルとフェイスブックはいずれもその機能を提供している。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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