ロサンジェルス郡の山火事で緊急対応アプリケーション群の使用が激増 〜 発生場所や大気汚染、避難命令、強風警報、さまざまの状況を逐次追跡
CNBCによると、カリフォルニア州ロサンジェルス郡で発生した大規模かつ複数の山火事を受けて、緊急対応を支援するアプリケーション群のダウンロードが急増している。
▽新興企業のゴーズが提供するゴーズ・ヘルス
被災地に赴く人たちのために健康管理情報を提供するアプリケーション「ゴーズ・ヘルス(GOES Health)」を開発する新興企業ゴーズ(GOES)のヴィクター・マカースキ技術責任者は、過去2年近くにわたって、その技術の開発に取り組んできた。しかし、自身の私生活が仕事と重なるとは思ってもいなかったという。
1月8日の夜、同氏はワシントン州への休暇旅行からロサンジェルスに帰宅した。ロサンジェルス上空に近づいた時点で、自宅界隈には避難命令がすでに出ていた。「着陸すると煙の臭いが機内に充満した。オンラインで映像を見るのと、複数の知覚で感じるのとではまったく異なる体験だ。戦争地帯に入ったと感じた」と同氏は話す。
▽使用量は約800%急増、新規利用者数は3倍に
2021年に設立されたゴーズは、おもに遠隔地の被災地に出動する救援部隊や冒険旅行者のために、場所に応じた健康関連情報を提供するアプリケーションを開発している。「GOES」は「Global Outdoor Emergency Support」の略だ。
しかし最近では、都市に住む人でもハリケーンや竜巻、火災、洪水といった自然災害に見舞われることが増え、ゴーズ・ヘルスの有用性が高まっている。ロサンジェルス郡の火災発生前日にあたる6日以降、同地域でのゴーズ・ヘルスの使用量は約800%急増した。過去2週間以内に使い始めた新規利用者数はカリフォルニア州で3倍に増えたという。
▽気象情報アプリケーションよりはるかに有用
ゴーズ・ヘルスは、動物に噛まれた場合の応急措置や低体温症の対策のように屋外活動を楽しむ人向けの情報から、大気汚染や気象警報といっただれにでも役立つ情報まで多岐にわたる情報を提供している。
マカースキ氏は、自宅に着いてから複数のアプリケーションを見たところ、ほかの気象情報アプリケーションではロサンジェルス国際空港の情報しか提供しておらず、火災規模が「中程度」だったのに対し、正確な緯度と経度を使うゴーズ・ヘルスでは、大気汚染がはるかにひどいことが表示された、と指摘した。
▽即応部隊向けアプリケーションのウォッチ・デューティー
今回の山火事で使用者が急増しているのは、ゴーズ・ヘルスだけではない。2021年に非営利団体によって開発されたウォッチ・デューティー(Watch Duty)は、今回の火災発生以降、ロサンジェルス地域でほぼだれもが使うようになった。iOSの無料アプリケーションとして先週にはダウンロード件数が1位になり、13日時点でも5位以内に入っていた。火災がどこで発生しどこに広がりつつあるかや、避難命令対象地区や停電しているえ地区を見ることができる。
ウォッチ・デューティーは10日に、自社システムが「引き続き100%稼働している」ことをエックスに投稿し、「無線オペレーターたちは交代で仮眠を取り、工学者たちは毎秒10万件にも達するリクエストに対応すべく最善を尽くし、20秒未満という平均対応時間を維持している」と発信した。
ウォッチ・デューティーは、消防士や緊急出動部隊、その管理者らによって開発され、特に火災に関連する情報提供を専門としている。
▽被災現場では医療機関に頼れない実情に照準し機能設計
ゴーズの共同設立者兼CEOであるカミロ・バルセナス氏は、医療業界での職歴が長く、スタンフォード大学病院で技術開発に携わった経験もある。
同氏は、2019年にゴーズ起業計画に着手し、北米や南米、アジア、欧州、中東の人々に聞き取り調査を実施して、安全管理のヒントを得た。その結果、被災時には医療が頼りにならないため、一般の人がまずは自分で対処する方法を学ぶことが重要だと考えたという。
9月にハリケーン・へリーンでノース・キャロライナ州に大きな被害が出た際には、現地に飛んで住民や救援部隊にアプリケーションの使い方を伝え、実際に同アプリケーションが有用であることを明確にした。
▽ ゴーズの有料コンテントは月額6ドル
技術責任者のマカースキ氏は、ロサンジェルスに戻る前に強風警報や大気汚染の状況を同アプリケーションで追跡し、微粒子から肺を守るにはN95マスクが必要であることも知った。「そのおかげで必要物資を買いに行き、備えることができた」と同氏は話す。
ゴーズのアプリケーションは、一部の機能を無料で提供し、大気汚染や日焼けリスクの状況を所在地にもとづいて確認することができる。安全管理のガイドを含む有料コンテントと機能の利用料は月額6ドルまたは年36ドルだ。
同アプリケーションは市場投入から2年未満だが、すでに大きく進化しており、今後も新しい機能を多数追加予定だ、とバルセナス氏は述べた。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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