車部品業者、先の読めぬ電動化ペースに苦慮

電気自動車(EV)向けに電池などの部品を供給するサプライヤーは、世界的なEV市場の拡大を背景に存在感を増しているが、政策や規制の不確実性が高まる中で市場の先行きがはっきりせず、苦しい適応を強いられている。

◇複雑な市場

オートモーティブ・ニュースによると、中国の大手EV電池メーカー寧徳時代新能源科技(CATL)は、2024年の自動車メーカー向け売上高が推定352億ドルに達し、同誌の25年世界サプライヤー上位100社ランキングで5位に入った。また、韓国のリチウムイオン電池大手SKオンは、メーカー向け売上高が45億ドルで53位にランクインした。ただ、両社ともに自動車メーカー向けの売り上げは前年に比べて大幅に減少しており、CATLは推定15%減、SKオンは同54%減と、順位入りした他の企業よりも大幅な落ち込みを見せている。

これらの減少は複雑な要因による。CATLの場合、中国EV市場における価格競争の激化で、販売量は増えたが売り上げは減少した。SKオンは、世界的なEV需要の低下を売り上げ減の理由に挙げた。一方で売り上げを増やしているEV電池メーカーもある。中国の電池大手ゴーション(Gotion)は前年比で約12%増となる推定36億ドルを売り上げ、ランキングでは67位に入った。

こうした販売実績の差は市場の複雑さを反映しており、EV部品の将来の売り上げ予測がいかに困難かを示している。

◇不透明感は続く24年は、自動車メーカーが電動化計画を大幅に変更し、複数の主要なEVプログラムが延期、縮小、中止されたため、サプライチェーン(部品供給網)は予想以上の売り上げ減と、過剰投資による資本損失に直面した。米国ではEVの消費者向けおよび製造者向けインセンティブの将来に関する不確実性が高まっているほか、連邦燃費規制の動向も不透明なため、25年は企業の経営判断がさらに難しくなっている。S&Pグローバル・モビリティーの報告によると、4月の米国のEV登録台数は前年比4.4%減と、24年2月以来初めてマイナスとなった。世界的な貿易環境の急速な変化と相まって、多くのサプライヤーは投資先や投資すべき分野を決定できない状態に陥っている。ドイツのZFグループは「2~3年前にはEV一択と見られていたが、今はより多様な技術が求められている」と説明し、31年時点でのEV販売構成比予測を従来の55%から39%に引き下げた。米国市場については、EV、ハイブリッド車(HV)、内燃エンジン車で三分されると見込んでいる。ZFを含む大手サプライヤーは、今後数年間はガソリン車向け部品の販売が引き続き主な収入源となる一方、北米および中国市場ではHVの重要性が増すと予想している。ランキング1位の独ロバート・ボッシュは、24年の北米市場で、多様なパワートレイン分野に幅広い技術ポートフォリオを持っていることが幸いした。サプライヤー各社は、ペースは不確実ながらEV市場の成長については確信しており、そのペースは電池技術の進展次第だと見ている。ZFの幹部は「800マイル以上の航続距離を実現できる全固体電池のような技術が実現するまでは、ほかの技術も残り続ける」と話している。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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