NECの忙しい1週間 〜レノボとの事業売買交渉は難航、米社とは業務提携
- 2013年7月19日
- ハイテク情報
NECは、ここ数日の間、スマートフォン事業からの撤退検討と、クラウド事業の拡張で忙しく動いた。ロイター通信とイーウィーク誌、マーケットウォッチ誌によると、NECは、スマートフォン事業をレノボに売却しようとしているが交渉は難航。その一方で、クラウド事業では米社と提携を交わし、アジア市場の開拓を強化している。
▽合弁事業と特許の所有権が争点
NECは2013年の初めから、同社とカシオ、そして日立によるスマートフォン開発の合弁事業であるNECカシオ・モバイル・コミュニケーションズの所有権一部をレノボ(Lenovo)に売却する交渉を続けてきた。
しかし、両社の協議は、どの企業が合弁事業の過半数所有者になるかや特許権の所有権がどの企業に帰属するかという点で交渉がまとまらず、暗礁に乗り上げた。
▽完全撤退も視野に
匿名希望の関係者によると、NECは、レノボ以外のパートナーを探すか、スマートフォン事業から完全撤退することで、競争の激しい同事業に費やす各種の資源を別の事業に回すことを検討し始めた。
NECカシオの70%を所有するNECは、同合弁事業から撤退することで経費を大幅に削減し、財務体質の改善を狙っている。
NECは、日本の携帯電話機市場において一時期、大手の一角に位置したが、現在では市場占有率を5%まで低下させた。過去2年間では、NECのスマートフォン事業は赤字を強いられている。
▽スマートフォン事業拡大を狙うレノボ
かたやレノボは、パソコン事業でヒューレット・パッカード(HP)とデル(Dell)を抜いて世界最大手に躍進するとともに、スマートフォンを次なる成長事業と位置付けている。
レノボとNECはパソコン事業において以前から業務提携している関係にあるため、レノボがNECカシオの過半数を買い取る内容でNECが打診して協議が始まったという経緯だ。
▽NECカシオの過半数取得に慎重
ただ、レノボとしても、スマートフォン市場の競争があまりにも激しいため、日本市場でもわずか5%しか占めないNECカシオの過半数を買収することには慎重だ。
世界のスマートフォン市場では、アップル(Apple)とサムスン(Samsung)の2強が支配し、その後を台湾HTCやグーグル(Google)傘下のモトローラ(Motorola)、LG、ノキア(Nokia)、ブラックベリー(BlackBerry)がしのぎを削っている。
▽ブラックベリー買収にも関心
レノボはスマートフォン事業にすでに進出している。
2013年1月の消費者電子製品国際見本市(CES)では、レノボは6種類のスマートフォンを紹介し、インテル(Intel)の省電力型プロセッサー「アトム(Atom)」とグーグルのアンドロイド(Android)で走る旗艦機種「K900」を発表。
さらに、経営難に直面している旧リサーチ・イン・モーション(RIM)改めブラックベリーの買収をレノボが検討しているという噂も立つほど、レノボはスマートフォン事業の拡大に重きを置いている。
▽パソコン販売依存からの脱却
パソコン市場で世界最大手になったとは言え、パソコンの世界販売台数が継続的に減少している昨今、レノボにとって、成長を続けるためにはスマートフォン事業への進出が優先課題となっている。
レノボはそれと同時に、サーバー事業の拡大にも食指を伸ばしており、パソコン販売依存からの脱却路線を鮮明にさせている。同社は、ストレージ大手の米EMCとレノボEMCという合弁事業を立ち上げ、x86系サーバーも開発している。
▽レノボ以外の候補は不明
NECとレノボの交渉の行方はいまのところ、決裂する可能性が強まっているが、NECがスマートフォン事業からの撤退を模索し、レノボが同事業の拡大を図っていることは明白だ。
その交渉が決裂した場合、NECがどの企業に売却話を持っていくかはいっさい不明。
▽NEC、米モーフラブズと提携
NECはそれとは別に、クラウド関連事業拡大戦略の一環として、米国のクラウド・ソリューション・プロバイダーであるモーフラブズ(Morphlabs)と業務提携を結んだ。
両社は、各種設定前の認定エムクラウド・ソリューションズ(mCloud Solutions)とNEC製サーバー「エクスプレス5800(Express5800)」をクラウド・サービス・プロバイダーに販売する。
▽コンパクトかつ高拡張性
エムクラウド・ソリューションズは、オープンスタック(OpenStack)のプラットフォームを基盤にし、コンパクトながらも拡張性とクラウド基幹設備の高効率性に富んだ設計が売りだ。
エムクラウド・ソリューションズは、サーバーの使用量を計測して、それに応じて請求書を自動作成するシステムが統合されており、運営コストの節約をはじめ、設置から稼働までの時間短縮、そして洗練されたクラウド・サービスをプロバイダーに提供できる。
▽低価格と高効率性を武器にアジア市場を開拓
ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)を備えた高効率のNECエクスプレス5800サーバー・システムをエムクラウド・ソリューションズと同梱することで、極めて競争力のある価格で効率的パフォーマンスを可能にした、と両社は発表。
「特にアジアという成長市場において、パブリック・クラウドと独自のクラウド・サービスを迅速に構築するのに有効なシステムをクラウド・サービス・プロバイダーに提供できる」とNECのITプラットフォーム統括責任者イワモト・カズヒロ氏は述べた。
NECのサーバー・システムで走るエムクラウド・ソリューションズは、フィリピンやインドネシアを含むアジア各国ですでに設置され始めている。
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