迅速な商品配達を求める消費者に応えようと貨物を空輸する企業が増えた結果、貨物室のスペースが不足し、運賃が高騰している。
■金融危機後最大の上昇
ウォールストリート・ジャーナルによると、年末商戦が始まった2017年11月、 航空貨物の世界取扱量は前年同月比で約9%増加し、輸送料金は金融危機以降で最大となる17%増を記録した(ワールドACD調べ)。
原因の1つは、オンラインで買い物をする人があらゆる商品に迅速な宅配を期待するようになったためで、従来はコンテナ船、鉄道、トラックで運ばれた物が旅客機や貨物機で運ばれるようになった。同時に、世界の経済は堅調なため、以前から飛行機で運ばれていた自動車部品や製造部品の需要も高まっている。
この結果、かつてないほど激しい空輸スペースの奪い合いが起きており、オンライン小売大手アマゾンが独自の航空会社を立ち上げるなど、退役したジェット機を貨物機に改造して再利用する動きも見られる。
18年は伸びが減速するとの予想もあるが、産業活動や貿易の見通しは非常に堅調なため、ボーイング民間航空機部門の市場アナリストは4〜5%の成長を見込んでいる。
■犬の餌まで飛行機で
17年はアップルやサムスンの新型スマートフォン需要が空輸料金を押し上げたほか、主要な空輸品である半導体の出荷も増え、メーカーは早まった配達期日と小売り在庫抑制の動きに対応するため、玩具や衣類なども飛行機に積み込んだ。 さらに最近は、eコマースの翌日配達に慣れた消費者のためにドッグフードやパスタソースまでが空輸されるようになっており、UPSの広報は「日用品の空輸がますます増えている」と話す。
ニューヨークやアトランタといった主要ハブ空港の渋滞を避けるため、小売店などに向けた貨物をミシガン州デトロイトやノースカロライナ州シャーロットなどの空港から出荷することもある。世界の貨物輸送に占める空輸の構成比は現在の約2%から増加すると見込まれており、貨物の値段で見るとすでに約3分の1を占めている。
DHLエクスプレスやアマゾン向けに貨物機を運航するエア・トランスポート・サービシズ・グループ(ATSG、本社オハイオ州)のジョー・ヒートCEOは「より速いeコマース配達を実現するため空輸貨物の比率が拡大しており、18年以降は利益がさらに伸びると見込んでいる」と話す。
■アマゾンは独自輸送を拡大
アマゾンは、配送大手DHLやUPS、フェデックスを使った輸送体制を補強するため、独自の航空事業を構築している。15年には巨大な発送センター近くの空港に貨物を運ぶためATSGと契約。その後、空輸大手アトラス・エア・ワールドワイド・ホールディングスとも提携し、2つの空輸サービス会社は米国内でアマゾンの空輸サービス「プライム・エア」の需要に対応するため、18年末までにボーイング767-300の中古機40機を貨物機に改造する計画を進めている。
アマゾンはプライムサービスですでにジェット機約30機を使っており、シンシナティ-ノーザンケンタッキー空港には独自の貨物ハブも建設する計画で、20年までには第1工期分を稼働させ、最終的には100機を運用できるようにする予定。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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