Vol.38 生命の物語が育まれた地
ミグアシャ国立公園
− カナダ ケベック州 −
- 2024年2月7日
- 2024年2月号掲載
世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2023年1月現在、167カ国で1157件(文化遺産900件、自然遺産218件、複合遺産39件)が登録されている。
カナダの東部、ケベック州のガスペ半島南岸に位置するミグアシャ国立公園では、約3億7000万年前に遡るデボン紀の化石が多く見つかっている。デボン紀は「魚の時代」とも呼ばれており、世界中の水域で魚類が爆発的な進化を遂げた時代だ。
公園内、シャルール湾の断崖に残っているエスクミナック層という地層からは、魚類や脊椎動物の化石が21種類、また植物の化石が約10種類発掘されている。特に、水中から初めて陸上に進出した生物といわれる「エウステノプテロン」の魚類から四肢動物への進化を示す化石が見つかっており、デボン紀における脊椎動物の進化の過程を解明するうえで重要な証拠となっている。また、1998年にはガスペの断崖から1万4200点以上にのぼる化石も発見された。
ミグアシャ国立公園で発掘される化石は保存状態が非常に良く、時には完全な標本や三次元的な標本が見つかることもある。さらに、軟骨のような柔らかい部位の化石や糞、鰓の痕跡、血管や神経の痕跡まで見つかっており、世界中の研究者から高い注目を集めているのだ。これらの化石は世界各国の博物館や大学、研究機関などに送られ、科学的研究に役立てられている。ミグアシャ国立公園は、化石の出土量や科学的価値、優れた保存状態により、1999年に世界自然遺産に登録された。
生命の進化の真髄へ
ミグアシャ国立公園に到着したら、まずは自然歴史博物館へ足を運ぼう。博物館には公園内で発掘されたさまざまな化石が展示されており、水中から陸上へと進出していく生物の歴史を学ぶことができる。
博物館で進化の過程をしっかりと学んだ後は、いよいよ公園内を散策。Trail of the Evolution of Lifeと呼ばれる約3.5キロのハイキングトレイルは、レスティゴーシュ川の河口から断崖沿いを歩きながら美しい景色を堪能することができるコースだ。トレイル沿いには所どころにデボン紀の歴史や化石に関する解説パネルがあるので、生命の進化について学びながら壮大な生命の物語に没頭しよう。子どもと一緒に訪れるなら、The Elpi Rallyに参加するのがおすすめ。絵や文字で表されたヒントをもとに公園内で化石を探索しながら答え合わせをするという、宝探しのような冒険感覚を楽しめるアクティビティだ。
沿岸の美しい自然とそこに鮮明に残る化石群を通して、地球上の生命の進化の奥深さを感じさせてくれるミグアシャ国立公園。大地に刻まれた生命の壮大な物語を再発見する旅は、忘れがたい思い出になるだろう。
遺産プロフィール
ミグアシャ国立公園
Miguasha National Park
登録年 1999年
遺産種別 世界自然遺産
https://parks.canada.ca/culture/spm-whs/sites-canada/sec02m
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