Vol.37 生命の物語が育まれた地
ミグアシャ国立公園
− カナダ ケベック州 −

世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2023年1月現在、167カ国で1157件(文化遺産900件、自然遺産218件、複合遺産39件)が登録されている。

長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために1985年に州立公園に指定された ©︎Timothy Neesam/flickr

カナダの東部、ケベック州のガスペ半島南岸に位置するミグアシャ国立公園では、約3億7000万年前に遡るデボン紀の化石が多く見つかっている。デボン紀は「魚の時代」とも呼ばれており、世界中の水域で魚類が爆発的な進化を遂げた時代だ。

公園内、シャルール湾の断崖に残っているエスクミナック層という地層からは、魚類や脊椎動物の化石が21種類、また植物の化石が約10種類発掘されている。特に、水中から初めて陸上に進出した生物といわれる「エウステノプテロン」の魚類から四肢動物への進化を示す化石が見つかっており、デボン紀における脊椎動物の進化の過程を解明するうえで重要な証拠となっている。また、1998年にはガスペの断崖から1万4200点以上にのぼる化石も発見された。

ミグアシャ国立公園で発掘される化石は保存状態が非常に良く、時には完全な標本や三次元的な標本が見つかることもある。さらに、軟骨のような柔らかい部位の化石や糞、鰓の痕跡、血管や神経の痕跡まで見つかっており、世界中の研究者から高い注目を集めているのだ。これらの化石は世界各国の博物館や大学、研究機関などに送られ、科学的研究に役立てられている。ミグアシャ国立公園は、化石の出土量や科学的価値、優れた保存状態により、1999年に世界自然遺産に登録された。

生命の進化の真髄へ

ミグアシャ国立公園に到着したら、まずは自然歴史博物館へ足を運ぼう。博物館には公園内で発掘されたさまざまな化石が展示されており、水中から陸上へと進出していく生物の歴史を学ぶことができる。

博物館で進化の過程をしっかりと学んだ後は、いよいよ公園内を散策。Trail of the Evolution of Lifeと呼ばれる約3.5キロのハイキングトレイルは、レスティゴーシュ川の河口から断崖沿いを歩きながら美しい景色を堪能することができるコースだ。トレイル沿いには所どころにデボン紀の歴史や化石に関する解説パネルがあるので、生命の進化について学びながら壮大な生命の物語に没頭しよう。子どもと一緒に訪れるなら、The Elpi Rallyに参加するのがおすすめ。絵や文字で表されたヒントをもとに公園内で化石を探索しながら答え合わせをするという、宝探しのような冒険感覚を楽しめるアクティビティだ。

沿岸の美しい自然とそこに鮮明に残る化石群を通して、地球上の生命の進化の奥深さを感じさせてくれるミグアシャ国立公園。大地に刻まれた生命の壮大な物語を再発見する旅は、忘れがたい思い出になるだろう。

自然歴史博物館では、ミグアシャで発掘された数々の化石を見ることができる ©︎Mike Beauregard/flickr
遺産プロフィール

ミグアシャ国立公園
Miguasha National Park

登録年 1999年
遺産種別 世界自然遺産
https://parks.canada.ca/culture/spm-whs/sites-canada/sec02m

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

齋藤春菜 (Haruna Saito)

齋藤春菜 (Haruna Saito)

ライタープロフィール

物流会社で営業職、出版社で旅行雑誌の編集職を経て渡米。思い立ったら国内外を問わずふらりと旅に出ては、その地の文化や人々、景色を写真に収めて歩く。世界遺産検定1級所持。

この著者の最新の記事

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  2. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  3. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  4. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
  5. 私たちは習慣や文化の違いから思わぬトラブルに巻き込まれることがあり、当事務所も多種多様なお...
  6. カナダの大西洋側、ニューファンドランド島の北端に位置するランス·オー·メドー国定史跡は、ヴァイキン...
  7. 2023年12月8日

    アドベンチャー
    山の中の野花 今、私たちは歴史上経験したことのないチャレンジに遭遇している。一つは地球温暖化...
  8. 2023年12月6日

    再度、留学のススメ
    名古屋駅でホストファミリーと涙の別れ(写真提供:名古屋市) 以前に、たとえ短期であっても海外...
ページ上部へ戻る