EV大手テスラがこのほど、自社の急速充電網をフォード車などに開放した。今後より多くのメーカー車両も利用可能になる予定で、EVの航続距離や充電に関する消費者の不安が緩和され、普及が加速すると期待されている。
◇充電絡みの不安薄まる
オートモーティブ・ニュースによると、テスラのイーロン・マスクCEOは以前から、EVの普及を進めるために「スーパーチャージャー」ネットワークを他のブランドに開放する意向を示しており、2月末のフォードに続いて3週間後にはリビアンにもアクセスを許可した。2025年までにBMW、GM、ホンダ、現代(ヒョンデ)、メルセデス・ベンツ、トヨタ、フォルクスワーゲン(VW)と続き、より多くのメーカーの車両が段階的に利用可能になる。
テスラの充電ネットワークが開放されれば、一般ユーザーが利用できる急速充電器の数は約2倍に増える見込みで、コンサルティング会社EVアダプションのローレン・マクドナルドCEOは「基本的に、購入の意思決定の段階から充電に関する不安が取り除かれる」と見ている。
同氏によると、テスラがEV市場を独占している理由の一つは「スーパーチャージャー」がそうした消費者の懸念をほぼ払拭しているためだという。他社もこれを利用できれば、テスラに興味のない潜在的なEV購入者にもメーカーやモデルの選択肢が広がり「アウディ、フォード、リビアンなどの購入を考える際、1万5000基のスーパーチャージャーで充電できると分かれば各社がほぼ同じ土俵で闘えることになる」(マクドナルド氏)。
リビアンでは、「スーパーチャージャー」が使えるようになったことで利用可能な急速充電器の数が倍増している。24年中には同社も、独自の急速充電ネットワーク「リビアン・アドベンチャー・ネットワーク」(433基)をすべての自動車ブランドに開放する予定だ。
北米のEV業界全体が単一規格のプラグ(給電口)に移行すれば、テスラ以外のEV所有者にも多くの充電施設が開放されるだけでなく、所有者は出かける前に充電器が自分の車に対応しているか確認する必要がなくなり、充電が大幅に簡素化されると見込まれる。
◇信頼できる公共充電
テスラは現在、全米で充電器の設置場所を増やしており、充電所の新設に資金を提供する政府のプログラムにも参加している。「テスラはスーパーチャージャー・ネットワークを将来の収益の柱にする」との見方もあり、オートフォーキャスト・ソリューションズのサム・フィオラニ副社長は「テスラの充電ビジネスは30年までに年間60億ドルから120億ドルの収益を生み出す」と予測する。
EV充電のほとんどは家庭で行われるが、長時間の移動中や、家庭で充電できないEV所有者、購入希望者にとっては公共の急速充電が必要で、EVの普及には信頼性の高い公共充電が不可欠と考えられる。独立機関による複数の調査では、テスラの「スーパーチャージャー」は、使いやすさや信頼性などの指標でエレクトリファイ・アメリカなどの同業よりもはるかに上位と評価されている。
エネルギー省は、テスラを含む十数社の急速充電器メーカー名を挙げ、現在国内約9500カ所に合計約4万台の充電器があると説明している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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